太秦からの映画便り

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映写室「ポエトリーアグネスの詩(うた)」イ・チャンドン監督合同会見:前編

映写室「ポエトリーアグネスの詩(うた)」イ・チャンドン監督合同会見:前編   
―常に弱者を見つめる韓国の名匠の新作―

 懸命に生きる登場人物たちに、光と影、善と悪、美しさと醜さ、賢さと愚かさと、表裏一体となった二面性を持たせ、その圧倒的なリアリティから世界に認められた、韓国の名匠イ・チャンドン監督の新作です。本作でカンヌ映画祭の脚本賞を獲り、その後も世界各地の映画祭で最優秀作品賞、監督賞を獲得して、名匠の名を更に高めました。心に染みる本作について、来日中のイ・チャンドン監督に伺いました。


<その前に「ポエトリーアグネスの詩(うた)」とは>
 釜山で働く娘の代わりに中学生の孫息子を育てる、初老の女性ミジャ。この頃物忘れが激しくアルツハイマーの初期症状と知る。貧しいけれど、何時もお洒落を忘れず夢見がち。皆からはお洒落はお婆さんと言われる。通り掛かりに詩の教室を見つけ通い始めた。ひょんな事から、孫が犯した性犯罪を知る。被害者は自殺していた。ミジャの苦しみが始まり、やがて一遍の詩が生まれる。


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<イ・チャンドン監督合同会見>
―過去にあった少女の事件とこの物語を思いついたことの繋がりは?
イ・チャンドン監督(以下敬称略):この映画の中で触れているのは、実際に韓国の一地方都市であった事件ですが、その事をモデルにしたわけではありません。事件そのものの内容もこの映画とは違うし、少女が自殺することもありませんから。あの事件が起こった時、大きな衝撃が私の中で湧き起りました。その思いを映画で語りたいと思ったけれど、方法を探すのが大変でした。皆に解かりよく、被害者の立場や、第三者の刑事の立場でも語れるけれど、私の感覚としてそうではなかったんです。そんな風に鬱々としている頃、京都のホテルでテレビを見ていて、美しい映像が流れ、その時本を読んでいた私に、詩と言う言葉が浮かんできました。で、60代のお祖母さんが、初めて詩を書くということを思いついたんです。残忍な事件と美しい詩を書くという、かけ離れた二つの事を、結び付けたいと思いました。

―それは何時頃の事ですか?
イ:2008年の2月頃だったと思いますが、はっきりはしていません。主人公のように私も少し呆けています。(笑)
―主人公を61歳で認知症に設定していますが、意味は? 終戦やその前の日本支配の歴史が関係あるのでしょうか?
イ:いえ、関係ありません。主人公の生まれは1944年に設定していますが、意味というより、演じた女優さんに合わせたと言う、単純なことです。
―音楽がないのが印象的です。風の音、水の音等が心に残りました。
イ:僕は元々、映画の中で音楽をたくさん使うことを好みません。音楽と言うのは、作られた感情を押し付けて来るところがあるので、それを避けたいのです。この作品は見えない美しさを見つけ出すことに意味があり、だから音楽はこの作品のコンセプトに反する。色々な音の中から、込められた思いを見つけて欲しいと思いました。

―詩とは読むもので、映像で描くこととは対極にあると思うのですが、そこのあたりはどうお考えですか?
イ:難しい質問ですね。僕は映画を通じて、詩について語ったわけですが、詩の文字の部分を写すのはそれなりに意味があるのではないかと思いました。この映画は詩の映画ですが、文学の分野も含め、見えない部分の美しさを表現したいと思いました。見えない美しさを映画で表わしたかったのです。
―事件を起こした少年について伺います。世界各地で、少年が得体の知れない動機で犯罪を起こしていますが、これを見ても訳がわからないように描かれている。そこのあたりをどう思われますか?
イ:私は、ミジャの孫やその周りの少年たちが、この映画で説明できる因果関係で事件を起こしたとは思っていない。特別な子があの事件を起こしたのではなく、どこにでもいそうな青少年の起こした普遍的な事件だと思っています。それ以外にも、この混沌とした時代に、次の世代がどこへ行くのか気にかかります。それは孫を思うミジャの思いでもある。そんな彼女の心情を映画に込めたいと思いました。

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―パンフにある「映画が死に行く時代」と言う言葉の意味は?
イ:その上に書いてある「詩が死んでいく時代」と言うのは納得して下さったのでしょうか? 映画の場合は死んでいく元凶は激しい時代の変化です。いまや映画館に行かなくても、DVDだけでなく、インターネットからダウンロードして映画を見ることもあります。又3Dが主流になってきましたが、そういうものだけを大型スクリーンで観る時代になってしまった。皆映画館に行きません。私自身は映画は単なる娯楽ではなく、映画を通して色々な思いを伝えるものだと思うので、それを「詩の死に行く時代」と言う言葉に込めました。

―ミジャを演じた、ユン・ジョンヒさんについて伺います。どんな女優さんでどんな作品に出てこられた方でしょう? 長いブランクの後で監督のオファーを受けられた理由は
イ:1960年にデビューし、1970年代に活躍した伝説の女優さんです。現役の頃は雲の上の存在でした。ピアニストの方と結婚してフランスに行かれましたが、少しは出たものの、結婚後はほとんどスクリーンに出ていない。僕にしても、特に存じ上げていたわけではなく、何処かの映画祭で2,3回会ったくらいの関係です。でも今回この物語を思いついた時、本能的にミジャとジョンヒさんが近いと感じ、自分の中では主役は彼女だと決めていました。シナリオを書く前にお会いし出演をお願いしたところ、すぐに承諾して下さったのです。でも、撮影は楽ではなかった。彼女が活躍していたのは、アフレコの時代で、俳優さんが演技をする横で監督が付きっ切りで演出をつけていた。今は音も一緒に録って行くし、演技方法も違います。大変だったけれど、この物語をよく理解して演じて下さいました<明日に続く>

 この作品は、
3月3日からテアトル梅田で上映
3月31日からシネ・リーブル神戸、5月5日から京都シネマ にて公開
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