太秦からの映画便り

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映写室「鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言」山崎佑次監督インタビュー(前編)

映写室「鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言」山崎佑次監督インタビュー(前編) 
   ―木は鉄を凌駕する―

 かって鬼と畏れられた宮大工がいた。法隆寺の昭和大修理に関わった西岡常一だ。「木は自然が育てた命です。千年も千五百年も山で生き続けてきた、その命を建物に生かす。それが私ら宮大工の務めです」と言いきる。西岡が伝えたかった真髄は何なのか。西岡ブームに先駆け、西岡を撮ろうと東京から大阪に拠点を移し、最晩年の日々を綴った山崎佑次監督にお話を伺います。

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<その前に、西岡常一とは>
 明治41年奈良県生まれ。戦争による幾度かの応召を拒み、法輪寺三重塔、薬師寺金堂・西塔の再建を棟梁として手がけた。飛鳥時代からの寺院建築の技術を後世に伝え、「最後の宮大工」と言われる。平成7年没。「木は鉄を凌駕する」と言い、建築のみならず、安きに流れる日本文化や思想に反論し続けた。


<山崎佑次監督インタビュー>
―静謐な世界でした。西岡さんの指導の元、お弟子さんたちが鉋をかける様などまるで手品のようで、見惚れます。木の面が鏡のように平らになるんですね。監督が西岡さんを撮ろうと思われたきっかけを教えてください。
山崎佑次監督インタビュー(以下敬称略):東京で岩波映画や大島プロダクションにいたんですが、西岡さんのドキュメンタリーを撮ろうと決めていたので、大阪に帰って来たんです。で、サンクラフトという製作会社を作り、テレビ等の仕事をしながらチャンスを待っていました。1989年に西岡さんに企画書を持って行き、撮らして下さいとお願いしたわけです。
―その頃から、西岡さんは有名だったんですか? お恥ずかしい事に私は知らなかったんですが、今回西岡さんの話をすると、私の周りは皆知っていました。
山崎:いや、この頃はまだそれほど有名ではなかった。その後で西岡本が出たりして、有名になっていくんです。丁度その頃、僕の撮ったビデオが出て、おかげさまでよく売れました。「宮大工西岡常一の仕事」と「西岡常一・寺社建築講座」というビデオは、今回の人間西岡常一を伝えるものとは違い、西岡さんの仕事を中心に編集したもの。宮大工の技法や極意を映像で詳しく紹介しています。全国の大工さんたちが、メモを片手に繰り返し、教科書のように見てくれました。

―監督が西岡さんを撮ろうと思った真意はどちらだったんでしょう?
山崎:どちらもです。先に技術の作品を作ったわけですが、人も撮りたいけれど、技術も映像に残しておく必要があると思いました。法隆寺の昭和の大修理の後で、法輪寺の三重塔を新築再建するんですが、その時に鉄骨補強を巡って学者と大論争になるんです。西岡さんらしいなあと思いました。木に対する信頼の厚い人ですから、新築するのに鉄骨を使うなんてとんでもないと言うわけです。鉄骨補強は、木に穴を開けてやるんですが、木に傷をつけるような事は許せないと。法隆寺の時は鉄骨で補強したんです。それは木が古くなってるからで、もうすでに建ってから1500年程経っていますから、西岡さんもさすがに仕方がないと認めたわけです。でも今度は違う。新しい木だし、鉄骨で補強すればするほど、重くなって負荷がかかりますからね。木だけでそれより良い物が出来るのに何故だと。

―木に対する信頼が本当に強いんですね。
山崎:凄いですよ。ただ皆が誤解してるんだけど、1000年の檜を使えば建物は1000年持つというんじゃあなくて、西岡さんが言うのは、「1000年の檜をその木のくせを生かして上手く使えば、建物が1000年の命を持つ」という意味なんです。世間の人は誤解して、「そうかそんな古い木を使えばそれだけ持つのか」と、短絡的に考えてしまう。これは大きな違いなんですよ。
―そういう木の癖を、西岡さんはどこで感じるのでしょうか?
山崎:山に入って、木が生えている状態を見て、判断するわけです。日本にはもうそういう大木はないから、薬師寺の木を調達する為に、西岡さんは台湾の山に4回入っています。製材してからでは解からないらしいですね。山で木を見て、生えていた場所も見て、これは柱に、これは桁にと決めて伐採していく。

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©『鬼に訊け』製作委員会

―そんな古い木があるのは原生林ですか?
山崎:原生林です。凄いですよ。で、古い檜を伐採した後に新しい檜を植えて、今度はそれが1000年、2000年後に使えるわけです。古い木と新しい木、山が更新していってるんです。
―でも、そんな先まで地球があるかどうか解からない。複雑です。国有林の物だそうですが、膨大な時間をかけて育った木を日本に持ち出すことに、台湾は文句を言わないんですか?  話がそれますが、そういう木は物凄い国の財産ではと、心配になります。
山崎:そうなんです。実はもう伐採が禁止されました。今は、以前に伐採されたものしか買えません。これから困るでしょうねえ。値段がどんどん上がっていますからね。薬師寺も東塔の建築に入るんですが、木をどうするのかなあ。カナダとか、北米とかそっちの木を買うことになるんじゃあないかなあと。
―でも、日本と極端に気候の違うところで育った木で建てて、西岡さんの言うような1000年の命を持てるんでしょうか? 伊勢神宮が自前の森も持っているように、全国の神社仏閣が共同で組合を作って、国内に森を持つように出来ないんでしょうか?
山崎:ええ、そうなんです。実はすでにそういう動きがあります。

―そういう木を見る目も伝承されているんでしょうか?
山崎:ええ。法隆寺の大工さんに代々口伝されている大事なものがあって、西岡さんはおじいさんから教えられたようですが、西岡さんの著書にも書かれています。その中に、「堂塔建立の用材は木を買わずに山を買え」とか、「木は生育の方位のまま使え、東西南北はその方位のままに」、「堂塔の木組みは、寸法で組まず木の癖で組め」とか「木の癖組みは工人たちの心組み」とか、深くて大事な言葉が一杯あります。
―具体的には息子さんとか、お孫さんとかが?
山崎:いや、息子さんは継いでいません。小さい頃に西岡さんの貧しさを見て育っているんで、嫌になったんでしょう。大工にはならないといって別の仕事についています。宮大工というのは儲からなくて、仕事があるときだけの日当ですから、西岡さんほどの人でも、生活が安定したのは薬師寺に行ってからですよ。それでも給料を半分にしてくれと言うんですからね。講演料も、自分は給料を貰っているんだから、これは再建費に回してくれと、寺に渡している。本当に凄い人です。信念が違う。
<続きは明日>

この作品は、第七藝術劇場にて4月14日(土)~5月18日(金)上映
時間等は、劇場まで(06-6302-2073)
その後、 6月16日からシネ・リーブル神戸、
順次京都シネマ にて公開
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コメント


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いつも拝見させていただいております。
またおじゃまします。

nasunomisoitame | URL | 2012年05月15日(Tue)04:09 [EDIT]


Re: タイトルなし

有難う御座います。早く以前のペースに戻したいのですが、まあ少しづつ。

映画のツボ | URL | 2012年05月16日(Wed)06:23 [EDIT]


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| | 2013年03月31日(Sun)04:08 [EDIT]


 

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