太秦からの映画便り

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笑って泣ける映画

映写室 NO.143 僕たちと駐在さんの700日戦争     
 ―怪物人気ブログ小説を原作にして― 
 ネット社会を反映して、このところ映画の原作が多様化している。この作品も原作は2006年3月から始まったブログ小説だ。半分は実話なのに笑って泣けるという噂が口コミで広がり、2007年10月には1000万HITを突破する。今より長閑だったあの頃、悪戯盛りの高校生を叱りながらも温かい眼差しを向ける大人たちがいた。他愛ないけれどやっぱこんな話に弱い。スクリーンの中の人にも町にも煌きがあった時代に、私たちの記憶が疼く。悪戯が楽しくてたまらない通称ママチャリを、市原隼人が水を得た魚のように生き生きと演じています。

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(C)2008「ぼくちゅう」PARTNERS

 <舞台は1979年のとある田舎町> ママチャリ率いる7人組は、男子だけでつるんで悪戯ばかり。勉強そっちのけでお気楽な高校生活を送っていた。ところが新しい駐在さん(佐々木蔵之助)は、彼らの悪戯に法律違反すれすれでリベンジしてくる。何かあると、大人気なくも自転車で追いかけて来るのだ。それが見たいから悪戯が止められない。駐在さんもリベンジを諦めず、お互い一歩も譲らない戦いが続くという訳だ。
 <スクリーンの中に広がるのは>、青田風のそよぐ少し前の懐かしい風景。町にはまだおせっかいな大人もいれば人情もあった。今ほど受験にキュウキュウしてなかった80年前後は、高校生ものびのびとしていたのだ。田舎には今は消えてしまった何かがあった。この作品は悪戯が生きがいの男子高校生たちを真ん中に据え、そんな時代の空気感をちょっとノスタルジックに描いていく。

 <何と言っても次々と繰り広げられる>他愛ない悪戯が楽しい。ネズミ捕りをからかう為に自転車の全力疾走で試すスピード違反、交通指導の腹話術人形への悪戯、ちなみにリーダーの通称「ママチャリ」の由来は、スピード違反にママチャリで挑んで一人だけ違反までのスピードが出なかったからだ。捕まらなくて面目なさそうな顔をするのが可笑しくて笑い転げる。どこか間抜けなのも悪がきたちの憎めなさなのだ。
 <ここまでのことはともかく>、悪戯をして叱られた記憶は誰もが持つもの。何故悪戯があれほど楽しかったのだろう。子供といってもこのあたりは女子よりは男子の得意分野だ。この年頃の男子はどうしてこれ程馬鹿な事に夢中になれるのだろう。何をやっても楽しく、何があってもめげず、一晩寝れば全てが新しくなった頃。叱られて廊下に立たされても恥ずかしいと言うより得意そうで、男子の間では時には英雄扱い。教師を怒らせるのが生きがいのような男子すらいた。この主人公のママチャリもそんな一人だ。四六時中どうやったら駐在さんを困らせられるかと悪戯ばかりを考えている。元気に怒ってくれない人や本当に弱い人には悪戯しないのが暗黙のルールで、そんなルールを決して破らないのがあの頃の悪がきだった。

 <これを観ると彼らが悪戯をした理由が>少し解る。大人に叱られて半べそ顔の裏に見えるのは喜びだ。上目遣いで大人の怒りを窺う目の嬉しそうな事。叱られたかったんだ、叱る事で大人に構ってもらっていたんだと気付く。悪戯は真っ直ぐでは力及ばない大人と関われる、子供らしいコミュニケートらしい。そんな事をしてでも関わりたい人懐っこさが見えるから、案外腕白坊主は皆から愛されるんだなあ。7人組がまるで知恵比べをするように駐在さんに悪戯を仕掛けるさまに、今の悪がきやかっての悪がきたちが知らず知らず自分を重ねてしまう。
 <そんな高校生を全身で受け止める>駐在さんの隠した優しさがジーンと来る。佐々木蔵之助の抑えた演技と弾けた演技の振幅が良かった。悪戯って大人にじゃれる事なんだ、駐在さんはそれを知ってて叱りながらも甘えさせていたんだと、男同士ならではのコミュニケートが羨ましい。駐在さんでもいい、先生でもいい、大人と子供の間の橋渡しになり有り余るエネルギーのガス抜きをしてくれる兄貴分が今の世にもいるんだろうか。悪戯を本気で叱り、やっていい事と悪い事を怒鳴られながら教えてくれる仕組みは今も社会にあるんだろうか、なんて考えた。
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 <微妙に変わってしまった今>、自分たちの体験がエピソードの元になっているという原作者のママチャリと、その頃16歳だった塚本連平監督の二人が懐かしむようにあの頃を焙り出す。おっとそこに、この企画を通した当時13歳だったと言うプロデューサーも加えないといけない。80年代後半の生まれであの頃を知らないのに、7人組を演じる俳優達も楽しそうだ。めいっぱい弾けて少し年下の悪がき役を楽しんでいる。悪戯って年齢を問わない男子の楽しみらしい。つまり男子は照れ屋だからちょっとひねって誰かに懐くって事だなと、女子の私は納得した。

   4月5日(土)より全国一斉ロードショー

ディープな情報
1.80年前後が、最近よく映画化されます。昨夏の「遠くの空に消えた」もそうでした。今とどう違うかをはっきりとは言えないけれど、ここでは喫茶店のインベーダーゲーム、アイドルのポスター等で微妙に古い時代感が味わえます。この時代に特徴があるだけでなく、これからの日本の映画界を担う人々がこの時代に思春期を過ごし思い入れがあるのも、取り上げられる理由の一つかも。
2.同じ年頃の悪がきを描きながら、舞台になる年が10年遡るのが村上龍原作で李相日監督の創った「69 sixty nine」です。こちらは進学校が舞台なので、ちょっとこましゃくれていて大学の学生運動の真似をしていました。変らないのはどちらの男子も女子に妄想を抱くところで、マドンナに鼻の下を伸ばします。本当にこれは変らない。
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コメント


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参考になりました。ありがとうございます。

阿川 | URL | 2010年03月27日(Sat)21:48 [EDIT]


Re: タイトルなし

コメントを有難うございます。

犬塚 | URL | 2010年03月28日(Sun)03:24 [EDIT]


 

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