太秦からの映画便り

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映写室「死刑弁護人」斉藤潤一監督インタビュー(前編):犬塚芳美

映写室「死刑弁護人」斉藤潤一監督インタビュー(前編):犬塚芳美 
  ―悪魔の弁護人と呼ばれても、なお―

麻原彰晃(オウム真理教事件)、林眞須美(和歌山毒カレー事件)、木村修治(名古屋女子大生誘拐事件)、元少年(光市母子殺人事件)、丸山博文(新宿西口バス放火事件)これらはすべて、死刑事件だ。この全てを弁護してきた弁護士がいる。「極悪人の代理人」、「人殺しを弁護する人でなし」と呼ばれ、世間からバッシングを受けながらも、誰もやり手のない仕事を引き受ける安田好弘弁護士。世間の評価のダークサイドに寄り添い、問題作を作り続ける東海テレビの斉藤潤一監督にお話を伺いました。

shikeibengo_main_convert_20120714233219.jpg
©東海テレビ放送

<その前に、安田好弘弁護士の担当した主な事件>
1971:新宿クリスマスツリー爆弾事件(鎌田俊彦―無期懲役)
1972:あさま山荘事件(坂口弘-死刑:再審中)
   晴山事件(晴山広元-死刑)
1973:日航機ダッカハイジャック事件(丸山修-無期懲役)
1976:北海道庁爆破事件(大森勝久―死刑・再審中)
1980:新宿西口バス放火事件(丸山博文-無期懲役)
   山梨幼児誘拐殺人事件(梶原利行―無期懲役)
   名古屋女子大生誘拐事件(木村修治-死刑)
1986:仙台老夫婦殺人事件(堀江守男―死刑)
1988:名古屋アベック殺人事件(少年―無期懲役)
1989:オウム真理教事件(麻原彰晃-死刑・再審中)
1991:千葉福島岩手誘拐殺人事件(岡崎茂男―死刑)
1992:市川一家殺人事件(少年―死刑・再審中)
1998:和歌山毒カレー事件(林眞須美-死刑・再審中)
1999:光市母子殺人事件(元少年-死刑)

<斉藤潤一監督インタビュー>
―いつもながら、斉藤監督ならではの斬新な切り口ですね。感服しました。主人公、安田好弘弁護士の生き方にも感服です。カッコいい。この1年、個人的なことで多くの弁護士さんと関わりました。肩透かしを食わされることが多く、弁護士さんの嫌な面をたくさん見たのですが、安田弁護士の姿にこれぞ弁護士と、わが意を得た思いです。誰でもが正義、正しいと思うことを主張するのは簡単です。解からないもの、圧倒的に不利な中にも、人としての尊厳を守ろう、真理を追求しようとする姿に、司法界の光明を見た思いがしました。
斉藤潤一監督(以下敬称略):ありがとうございます。安田さんは外見もかっこいいですよ。
―でも、お若い頃の写真を拝見すると、素敵といっても普通じゃあないですか。今は、そんなレベルじゃあない。全身からにじみ出るものがある。すべてを包み込むようなオーラに惹かれました。
斉藤:そうなんです。いいお年の取り方をされていますよね。ぜひ本人にそう言ってあげてください。

―斉藤監督も安田弁護士に一目惚れされたと?
斉藤:そうですね。「光市母子殺人事件」で最初に取材に入ったんですが、僕も最初は悪魔の弁護人だと思って会ったのですが、すぐにそんな考えはなくなりました。名古屋にいるもので、安田さんに会ったことがなく、東京からの情報、新聞やワイドショー、週刊誌の論調に流されていました。マスコミはそういうトーンでしたからね。そういう悪いイメージで入ったからこそ、報道されているのとまったく違うじゃあないかと驚きました。そこから魅力に惹き込まれていきます。
―プロデューサーの阿武野さんが、百戦錬磨のカメラマン岩井彰彦さんが被写体の魅力のとりこになり、被写体との距離感をなくしていると書いていますが、距離感をなくしたのは岩井さんだけではなかったと?
斉藤:そうですね。僕もだし岩井さんもグーッと入り込みました。もともと密着取材は入り込まないと撮れないので、最初は仲良くなっていく作業をします。でも、仲良くなり過ぎると作品が偏るので、途中で少し引いて撮影をするのですが、安田さんの場合はずっと魅力に引き込まれ続けたまま。それが良いのか悪いのかは、作品として判定するしかないのですが、僕は必ずしも悪くなかったと思います。ちょっと引こうと思っても出来なかったというのが正直なところです。

―すごい魅力ですね。
斉藤:そうですね。もともとこの人は、一般の人から見ると極悪人というか、悪魔の人なので、見るほうは完全に負の部分からスタートしますから、べったりだとしても、中和されてちょうど良いのではと思います。
―メディアのこちら側にいる私達は、情報に流されて確かにそう思いましたが、テレビ局という、情報の中枢にいる方でもそう思っていたのですか?
斉藤:そうですね。完全に世の中の風潮に流されていました。でも、この人に会って、この人の過去の事件を追うと、大きな事件ばかりです。何でこの人はこんな事件ばかりやっているのか、変な人だなあと思ったのが、理由を知りたいと思った最初でした。麻原とも喋っていますし、林眞須美とも喋っている。どちらも我々から見ると、とんでもない人ですよね。そういう人を弁護するというのに興味を持ちました。

―自分の経験もあって、私もこれぞ弁護士と思いました。
斉藤:基本的にこういう刑事事件は全く儲かりません。報酬もほとんどありませんから。民事で顧問弁護士をやったりして、そこで稼いだものを全部こっちにつぎ込んでいる感じです。だからお金持ちでもない。弁護士というと裕福というイメージがありますが、安田さんにそういうイメージはありません。
―弁護士さんには表の顔と裏の顔があって、人権派といわれる人でも、メディアで取り上げられるような、世間から注目されるはっきりとした正義問題にはかかわるけれど、問題が複雑だとしり込みする。それにそういう大きな事件の陰で、民事で稼がないといけないから、儲からない中途半端な事件には、見て見ぬ振りをしてかかわらないんだと、思い知らされたところです。

斉藤:国選弁護人ってすごく安いんですよ。
―そうなんですか。善意の人に甘えると言う、そういうシステムも問題ですよね。私は観客として安田弁護士にやられ過ぎたのか、和歌山毒カレー事件の林眞須美についても「詐欺をして贅沢に暮らしてきた人が、一文の得にもならないことをやるとは思えない」という言葉に、なるほどと思ってしまいました。当時もそう思ったものですが、改めてそうだなあと。
斉藤:そうですよね。普通に考えるとそうなんです。でも、あの時は、我々マスコミにも責任があると思うのですが、ホースでバーっと水を撒くとかのシーンを見せて、この人がやったに違いないと思う雰囲気を作ってしまいました。もし冤罪だとしたら、間違いなくマスコミが犯人に仕立て上げましたね。
―まだ未定の方に、ああいう取材や報道をするのは、名誉毀損にならないのでしょうか?
斉藤:訴えたら勝つかもしれません。いや、訴えているかもしれませんね。ただし、今のところこの人が犯人なので、司法的な判断として、名誉毀損にはならないのかもしれませんが。

―斉藤監督は今までも多くの司法事件に取り組んでおられますね。
斉藤:一番最初に作ったのは「名張毒ぶどう酒事件」です。調べるうちに司法には色々問題があると思い、裁判官や検事さん、弁護士さんを密着取材して、いくつか番組を作りました。安田弁護士につながるのが「光市母子殺人事件」です。放映されると、被害者の気持ちがわかってないと抗議が来ました。だったら別の視点から作ろうと思い、あの時、被害者のご主人に取材を申し入れたのですが、もうそっとして欲しいと言われ出来なかった。だったら犯罪被害者を取材しようと「罪と罰」という作品を作りました。一つの作品を作ると次の課題が見えてくるわけです。そういう風に数珠繋ぎにして番組を作ってきました。
―実績を残されたからでしょうが、作り手としても、恵まれた環境なのですね。
斉藤:そうですね。テレビ局という安定した境遇で、好きなことをさせてもらっています。テレビも営利団体で、スポンサーのおかげで経営が成り立っているのですが、ドキュメンタリーはほとんどスポンサーがつきません。それでも、テレビ局の使命として、続けさせてくれています。それを応援してくれる人も多いんですよ。この作品は24時以降の放送でしたが、東海テレビは恵まれていて、土曜日や日曜日の午後1時からドキュメンタリーの枠があります。でもこれは、時間が長くてそこに収まりませんでした。深夜でも良いから、しっかり尺も取り、きちんとした作品を作ろうと考えたんです。(聞き手:犬塚芳美)
<明日に続く>

この作品は、7月28日から第七芸術劇場、
順次神戸アートビレッジセンター、京都シネマ にて公開

*7月28日18:40~の上映後、斉藤潤一監督と安田好弘弁護士のトークショーがあります。
*又、7月28日~8月3日の16:20より、日替わりで「免罪映画特集~戦う弁護士たち~」と題して、同劇場で下記の2作品が上映されます。時間等は劇場まで(06-6302-2073)
  A 「証人の椅子」(1965年)
B 「帝銀事件 死刑囚」(1964年)


スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。