太秦からの映画便り

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

コントロール

映写室 NO.145コントロール   
 ―天才ヴォーカリストの駆け抜けた波乱の時―
 1980年の朝、イギリス北部の町で一人の若者が自ら命を絶った。彼の名前はイアン・カーティスで、後にクラブシーンをリードするバンド、“ニュー・オーダー”の前身の “ジョイ・ディヴィジョン”のヴォーカル兼ソングライターだった。これから全米ツアーに発つという朝に、一体彼に何が起こったのか。生前に親交があり、U2、デヴィッド・ボウイ等、ロックスターを撮り続けたアントン・コービンが、謎を探りながらも天才ヴォーカリストをいとしむ様にモノクロームのフィルムに焼き付けている。波乱の時を疾走した若者の孤独と苦悩は、ロックファンだけでなく悩みながら生きる全ての人に響くだろう。心の震える作品です。

gontrol-m.jpg
(C)Northsee Limited 2007

 <スクリーンの中は、壁一面にロックスターの写真>を貼った部屋で回るターンテーブルや、スタンドマイクを使った派手なパフォーマンスに総立ちの、熱気とタバコの煙で霞むライブ会場と、どれもが懐かしい70年代末の音楽シーンだ。白黒のスタイリッシュな画面からは、そんなシーンの真ん中にいた彼の半生だけでなく、当時のイギリスの閉塞感や若者の鬱積した思いが匂い立つ。
 <イアン・カーティスの半生は>総てイギリスのロックシーンに重なっている。1956年にマンチェスターで生まれた彼は、10代半ばの頃イギリス北部の死んだ様な小さな町で、デヴィッド・ボウイに憧れ、音楽で世に出ようと思いつめていた。彼の音楽の根底にこの頃の鬱々としたものが流れているからこそ、閉塞感に押しつぶされそうだった若者の心を掴んだのだろう。町には不況の影が濃く未来が見えない。音楽は若者にとって現状の突破口だった。

 <でもパンクロックが怒りを社会に向ける外的なパフォーマンス的だったのに対し>、次の世代のイアン・カーティスは、怒りの刃を自分に向けてどこまでもひりひりと追い詰める。文学者のように内省的な創作スタイルは、最初から消耗戦で破滅的だった。彼の半生を見ると命を音楽に変えたようなもので、短い活動期間に納得する。それに観客とは無責任な者で、一途な瞳で内的苦悩を歌う彼の姿に熱狂し、自分が苦しむ変わりに時代の代弁者に祭り上げ、むしりとるようにエネルギーを奪っていく。あっという間にトップスターに躍り出た彼は、ファンの熱狂をかわす術のないまま、不器用に消費されつくすのだ。ステージが喜びから重圧に変わるのに時間はかからなかった。多くのアーティストが経験するだろうそのあたりを、痛ましいまでに描いている。

 <イアン・カーティスを演じるのはイギリス出身のサム・ライリー>で、彼の素敵さがこの映画の全てと言ってもいい。繊細な伝説のヴォーカリストの苦悩を見事に現代に蘇らせて、多くの映画賞を受賞している。文学青年のような風情は本人そっくりで、端正な顔で遠くを見据える横顔には、誰も近づけない孤高の人の悲しみが滲む。長身の背を少し丸めて細い指にタバコを燻らせながら無造作に着たよれよれのコート、肩に引っ掛けるズタ袋等はまるでモード写真で、息を呑むほどに美しい。しかもこのあたりはさすがカメラ出身の監督、精神世界までを写し取っている。サム・ライリーは古風なのに今の時代性もあって、時代を普遍的にするのが良い。あの頃の若者にも今の若者にも見えた。
 <彼が19歳で若くして結婚する妻デボラを演じるのがサマンサ・モートン> 本当言うともっと年上の役を演じる事の多い彼女は、サム・ライリーと似合わず最初から違和感が拭えない。彼女の放つ生活感や圧倒的な存在感が時には2人を親子にも見せるし、肉感を伴ってリアルに演じる演技力も上手過ぎて、何処かクールな他の俳優とは一線を記している。ロック歌手の夫に重いのが辛くなるほど解った。ファーストアルバムが出た頃に夫は最愛の女性を見つけ愛人関係になるが、その時にはもうすでに妻との関係が破綻。それでも妻とも別れられず、愛人との間で苦悩し命を削ることになる。

control-s.jpg

 <映画は彼の人生を支配する痙攣との遭遇を> 現実のままにさりげなく描く。昼間働く職業安定所で、面接をしていた女性が倒れ激しく痙攣するのだ。これをつぶさに観察して、代表作の“私 制御不能よ”と歌う「She’s Lost Control」を作るし、この光景がよほどの衝撃だったのか、彼の特徴の痙攣するように激しく体を揺するステージアクションも始まる。でも音楽の教示を得ながら、この時見た光景が後の自分の恐怖にもなった。
 <78年末のロンドン公演の後に>、始めて「てんかん」の発作に見舞われ薬物治療が始まるが、体力的にも精神的にも疲労が続いて発作はだんだんひどくなっていく。恐怖からの薬物に依存し、全米ツアーの直前の1980年の5月18日、久しぶりに帰った自宅で妻との口論の後激しい発作に見舞われると、泣き明かした挙句首を吊って自ら命を絶ったのだ。

 <この時の彼がファンと自分の音楽>、妻と愛人との間をさまよう愛、病気、薬物と、身も心もばらばらに引き裂かれて、“全てが制御不能”に陥っていたのは間違いない。音楽に全てをぶつけ熱い思いを滾らせていた若者は、後一歩で世界を制覇するところまで来ながら、驚愕するメンバーと妻と愛人と娘を残して力尽きた。生前の彼を思い出しながら、彼の“制御不能”に手助けはできなかったのか、彼の音楽は何だったのかと問いかけて、彗星の様に現れあっという間に消えた天才ヴォーカリストの輝きを、愛を込めて映した作品です。  (PG-12)

  4月12日(土)より、梅田ガーデンシネマ、京都シネマ、
              シネカノン神戸にてロードショー!


ディープな情報
 原作は未亡人のデボラ・カーティスが夫の伝記として纏めた物だ。監督のアントン・コービンは、“ジョイ・ディヴィジョン”の音楽に憧れオランダからロンドンに移ってきたほどのファンで、イアン・カーティスが亡くなる前に、バンドの写真やビデオ等を撮っている。又全編に流れるサウンドトラックは、ジョイ・ディヴィジョン”の残りのメンバーで作った“ニュー・オーダー”が楽曲を提供。音楽的にも見逃せない作品になっている。
スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

評判を聞いて公開を待っていました。白黒と言うのがいいですね。このバンドは知らないけれど、楽しみです。デヴィット・ボウイを柔かくした感じかな。もっと前のロックファンより。

tamura | URL | 2008年04月09日(Wed)20:23 [EDIT]


ブリティッシュロックって良いですよね。過激なのにどこか端整で。私も彼の事は知らなかったけれど、クイーンやデヴイット・ボウイの大ファンなので映像的にも音的にもこの映画にのめり込めました。物語はその上を行って良いですよ。サム・ライリーが本当にカッコいい!なんでもジュード・ロウやキリアン・マーフィを抑えての抜擢なのだとか。

映画のツボ | URL | 2008年04月10日(Thu)21:44 [EDIT]


承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

| | 2012年06月05日(Tue)18:00 [EDIT]


承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

| | 2012年07月25日(Wed)01:22 [EDIT]


 

トラックバック

TB*URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

大阪事務職求人情報

お邪魔いたします(^^)大阪の事務職求人を集めたブログです。よかったら遊びに来てください。
[続きを読む]

大阪西職安求人・大阪東職安求人 事務職求人【経理事務・一般事務・総務事務】 | 2008年06月11日(Wed) 13:28


 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。