太秦からの映画便り

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問題作の凱旋上映・後編

映写室「おそいひと」監督インタビュー(後編)     
―柴田剛監督に伺うこの作品の誕生秘話―
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(昨日の続き)
―話が前後しますが、この映画で優しさの影の自分の傲慢さを観たようで落ち込みました。
監督:この映画で直接差別される所を描いてはいません。でも描いてない行間で観客自身の感情を引き出し、揺さぶるようにしています。差別と遠慮や優しさは重なる所があるんです。健常者の僕らはどこかで障害者に遠慮している。実は僕も、もっと向かってきて欲しいと言われました。撮影の為に自分の差別意識を曝け出して、毎日喧嘩だった。差別というのを画面の中に閉じ込める為に喧嘩しようと思いました。遠慮を捨てて障害者の中に入ってカメラを回したからこそ戦友になれたんです。
―そんな風にして親しくなった敦子が「普通に生れたかった?」と尋ねるシーンがありますね。ドキッとしました。もちろん私はそんな事が言える所まで入れないし、彼女よりもっと悪いのかもしれませんが。
監督:それでもヘルパー暦10年の方だったら、どんなに親しくなってもそんなことは言わない。あの言葉は失言ですよね。普通という言葉自体が曖昧で、障害者を異物と見てるってことですよね。ポロッと出てしまった本音。まあそれだけでなく、ずっと一緒にいて仲間になって、そんな所から出た言葉でもある。敦子がもう自分は言える関係だと思ったから言った言葉で、彼女の表情も全く普通だった。でも言った後でやっぱりまずかったと言う空気は映っています。住田さんの「コロスゾ」と続く訳で。そんな事を平気で言うヘルパーさんもいて、言われた方もげらげら笑ってる事もあるから、その辺は微妙な関係性ですが。小児麻痺の人たちはなぜか実年齢より肉体が若く見えてしまうんですよ。住田さんにしても結構な年の大人なのに、僕らがタメ口をきいてしまうような若さがあります。彼らは言わないけれど、若く見えてそれで精神年齢まで低く見られたような会話をされるのが腹立たしいんじゃあないかなあ。

―それと彼女の言葉には諦めた思いに火をつけたようなところもありますよね。
監督:若い頃は不自由な体に苦しんだ事もあるでしょう。それで自殺する人もいます。でもどこかで強くなって、豪快に笑い始めた。辛いのは当然だけど、その瞬間を笑う事を選択して生きている。それに小児麻痺の人はひょうきんな人が多いんです。動きがコミカルなのもあるし、笑うしかしょうがないと諦めた達観からかもしれませんが。彼らを見ていると癒されます。健常者よりも武装を解いて生きてますね。幼年期に自立する為に他者に対する防御を取っ払っているんです。この「おそいひと」自体が映画界に対して精一杯そういう姿勢で作りました。障害者の心が映っていると自負しています。まあそれは住田さんが作ってくれたもので、こういう作業を通して障害者とはどういうものかを教えて上げると言われました。住田さんには喜怒哀楽のすべてが詰まっている。本当は誰でもそうなのだけど、住田さんは隠さずにそれを貫けた。体のハンディがあるから弱く生きる事が出来ない。強く生きるしかなかったんです。本当は女性の障害者も描きたかったんだけど、住田さんに止められました。会いに行ったんですけどね。映画は時に悪乗りしないと出来ない。住田さんは自分はそれが解っているからいいと。でも女性の障害者にはそんな事は出来ない、しないで欲しいと。
―色々な物を跳ね返す大変さを知ってるからでしょうね。
監督:其処に住田さんの優しさという女性差別もあるのでしょうが。見ていてやっぱ切ないですしね。
―そこに住田さんだけでなく監督の優しさという差別も重なるという事ですね。本人は案外大丈夫かもしれませんよ。まあ、それでも後でフォロー出来る環境がないと。
監督:其処の所は、環境が整って次の世代が取り組むことですよね。日本だと時間がかかるだろうなあ。

―だからこそ色々な方に観て欲しくて、上映がレイトショーというのが引っかかります。これを作った人と同じ視点の人だけが観る事になるなと。
監督:そうなんですよ。僕が東京の上映館を決めたのもそこがバリアフリーだったからです。時間も、誰かに遠慮しないで障害者が気楽に来れる時間帯に上映したい。映画を見に行くのに、ヘルパーがいなくても一人で行けたらいいなと思います。大阪もレイトショーでスタートしますが、人が入ると昼間にかかるので、ぜひヒットさせて拡大上映に持って行きたい。この映画で障害者の方が外に出るきっかけになるといいと思うんです。彼らと付き合って色々教えられた事があって、ステップバスとかも、「僕らが楽だったら健常者だって楽なはず」というんですよ。
―確かにそうですね。ところで題名ですが私はてっきり「遅い人」だと思っていました。
監督:僕も最初そんな意味でつけたんです。体が不自由だからどうしても動作が遅いと。自分の1作目から2作目までが5,6年かかっているのでその遅さも含めています。それと引っ掛けて、映画を観ていただけば気が付く、もう一つの「襲い人」ですね。そのあたりは住田さんの渾身の演技を観て下さい。

<インタビュー後記:犬塚>
 大好きな「シマフィルム」が又もややってくれました。重度障害者が体を使って人を殺すというこの映画は、過激でもあるけれどそれ以上に真実をついてくる。優しさや遠慮に潜む差別という痛い所を描いた繊細な映画です。誰もがはっとするでしょう。監督は大阪芸術大学の出身、舞台になるのも主演の住田雅清さんが住むのも大阪。しかも大阪芸大を中心にした監督の仲間達が結集して作られています。この映画はそんな意味でも、関西に住む私たちにとってまさにお帰りなさいです。2004年の完成から受難の旅でした。
 ところで色々なお話を伺いながら、監督自身を「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」のオダギリー・ジョーさん演じたリリー・フランキーさんに重ねていました。何時かこの映画の製作秘話が映画になるかもしれませんね。ドラマティックで、揺るぎのない映画への情熱が凄い。若い、これからもっと伸びるに違いない才能に出会って、うきうきとした帰路でした。夏公開の次回作も待機中。


  この作品は4月26日(土)より大阪第七芸術劇場で上映。
         監督や主演挨拶等のお問い合わせは(06-6302-2073)まで
        5月京都シネマ、
           順次神戸アートビレッジセンター、福知山シネマ等で上映。
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