太秦からの映画便り

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

大人も子供も満足する作品

映写室NO.147 スパイダーウィックの謎&
       さよなら。いつかわかること

  ―死生観や、子供の気持ちと大人の気持ち― 

 大型連休も目前。今週はそんな時節柄に合わせて、家族連れで観れる、大人も子供も満足する作品のチョイスです。妖精と人間の対決という風変わりなファンタジーと、混迷するイラク戦争から今もって抜け出せないアメリカの、銃後の家族の姿という対照的な2作品は、子供の視点で見ても親の視点で見てもいい。しかもそれぞれから浮かび上がるのはしみじみとした世界感。それが深い。明日記載の作品も含めて、G.Wは世界の天才子役たちの競演です。

1.スパイダーウィックの謎

supaida-m.jpg
(C) 2007 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 <このところ映画界はファンタジーブーム>だけれど、本家イギリスからではなく、「E.T」や「ジェラシック・パーク」を生み出したアメリカの敏腕プロデューサーから届いた本作の、扉の向こうへの入り口は少年のアドベンチャー精神だ。この作品心理描写も細かい。楽しませながらここまでの世界を描くなんてと、すっかり魅了された。
 <双子のジャレットとサイモン(フレディ・ハイモアの二役)>は、両親の不仲でしぶしぶ姉と母の4人で、森の中の古い館に引っ越してきた。どうしたことか館には大量の蜂蜜とトマトソースがある。ある日靴下が片方無くなり、ドアの向こうで何かが動く。ジャレットは自分達の他にも誰かいると館を探検して、“決して読んではいけない”という警告のついた1冊の本を見つける。それは80年前ここに住んでいたアーサー・スパイダーウィック大叔父さんの書いた妖精の手引書だった。

 <こうして見え始めたパラレルワールド>、彼が禁断の本を開いた時から、この一家は引き返せない世界に足を踏み入れていく。そこは妖精の世界で、醜い妖精もいれば綿虫のような儚く美しい妖精もいる。C.G技術を酷使した不思議な妖精が一杯登場するが、生存をかけて人間と戦ってくるのだから、妖精と言っても侮れないのだ。写真の先祖が妖精から我が身を守った最後の砦がこの館だった。沢山あった蜂蜜やトマトソースの謎も解けてくる。このあたりは複雑なストーリー展開に身を任せて、ハラハラどきどきと劇場で2時間の旅を楽しんで欲しい。

 <それにしても男の子はどうして冒険が好き>なのだろう。駄目だと言われると必ずそこに足を踏み込むし、見るなと言われたらそれを見ずにはおれない。主人公のジャレットがまさにそんな少年だ。観客は(止めて!)と袖を引っ張りたいほどに心配しながら、彼の後ろに隠れるように従い、気がつくとこの映画の世界に入っている。そんな風に導入しているから観客は常に恐怖感が拭えないが、それも醍醐味。単純な私はフレディが二役を演じている事にも気付かず、心臓をバクバクさせてひたすら映画の世界をさ迷っていた。「ネバーランド」、「チャーリーとチョコレート工場」等々、私はいつもこの天才子役にやられる。恐るべしフレディ・ハイモアだし、「イン・アメリカ‥‥」でお馴染みのサラ・ボルジャーの演じる姉の可愛さや勇敢さも見逃せない。
 <この映画が素晴らしいのは>、そんな架空の世界を舞台にしながら、両親の離婚という事態を子供がどう受け止めどう乗り越えていくかという現実を、少年の揺れる心に寄り添いしっかりと描いているところだ。子供の大人度に、大人だったら胸を突かれるだろう。
 物語は終盤思わぬところまで観客を連れて行く。序盤の複線が生かされ、たどり着くのは意外な死生観。私はここでノックアウトされた。

   4月26日(土)より、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、
              TOHOシネマズ二条他、全国でロードショー



2.さよなら。いつかわかること

sayo_m.jpg
(C) 2007 The Weinstein Company, LLC. All rights reserved.

 <アメリカは今大統領選挙の予備選の真っ最中で>、民主党のオバマ氏とクリントン女史の争いに世界中が注目するけれど、この映画はそんな報道にばかり気をとられ、私たちが忘れがちなアメリカのある種の現状を静かに伝える。イラク戦争を戦場や中東側から描く映画はあっても、銃後の、それも母親が兵士という一家の姿を描いた作品は初めてだ。
 <シカゴのホームセンターで働く>スタンレー(ジョン・キーザック)は、ある日イラクに兵士として赴任中の妻の死を伝えられる。幼い娘たちにどう伝えようと迷うばかりで、外食に連れ出したまま衝撃的にフロリダの遊園地まで出かけてしまう。12歳のハイディはそんな父を訝るが、8歳のドーンは大ハシャギだ。夜になると自宅に電話し留守電の妻の声を聞くが、なかなか娘たちには本当の事が言えない。

 <こうして書くと軟弱にも見える父親だけれど>、銃後の家族の心痛が痛々しい程に伝わってくる。母親が心配で父のいない時にこっそり戦争のニュースを見るハイディ、母親と同じ時間にお互いを思いあう約束をしているドーン、そんな2人の娘以上に妻の身を心配をしているものの、表面的には平気を装う父親と、それぞれの家族の様子がなんともリアルなのだ。反抗する事で父親に不安を伝える娘たちの姿は、赴任したのが父親で母親が残された場合とは明らかに違う。妻の訃報で全てがどうでもよくなって、さ迷うスタンレーや、些細な事に反応して不吉な予感に怯えながら、それでも信じたくないから考えるのを止めるハイディに、たいていの観客は感情移入するだろう。自分すら受け入れられない妻の死を、娘たちに話せなくて一人苦悩する父親の慟哭が、なにより身につまされる。
 <日本にいると信じられないが>、具体的な数字を挙げるとアメリカの現役兵士の14.3%が女性だし、その内約40%に子供がいるという。しかも07年11月末のイラク戦争のアメリカ軍戦死者3879名中、女性の戦死者は93名にも上がっている。(アメリカ国防省データより) 
スタンレーの妻はその中の一人だったのだ。この作品はそんな兵士の残された家族の悲しみを丁寧に描く事で、今も続いている戦争の悲劇を浮かび上がらせる。この一家の苦悩や悲しみはアメリカ社会のものだと思う。イラクにとってもアメリカにとっても、争いは悲劇でしかない事を改めて教えられる。
 自分の作品で音楽も手がけ、そのセンスが高く評価されるクリント・イーストウッドが、始めて単独で音楽を提供しているのも見逃せない。

  4/26(土)より、梅田ガーデンシネマ、シネカノン神戸で上映
        6/7(土)より京都シネマで上映予定
スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

| | 2013年02月12日(Tue)08:37 [EDIT]


 

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。