太秦からの映画便り

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「休暇」監督とプロデューサーの合同会見(前編)

映写室「休暇」監督とプロデューサーの合同会見(前編)   
 ―門井肇監督と小池和洋プロデューサーに伺う秘話―

 吉村昭の短編集「蛍」に収録される「休暇」が、34歳と35歳と言う若いコンビで映画化された。死刑囚の心情を描いた作品はあっても、死刑を執行するほうに光を当てた作品は珍しい。両者の運命の交差が、言葉にならない複雑な感情を観る者に呼び起こす、良質な作品になっています。この映画の製作に執念で漕ぎ着けた小池和洋プロデューサーと門井肇監督にお話を伺いました。

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(5月19日 大阪にて)

<その前に、「休暇」とはこんなお話>
平井(小林薫)は、拘置所に勤務する刑務官。この年まで独身だったが、子連れの美香(大塚寧々)と結婚が決まる。でも子供が懐かず、休暇がなくて新婚旅行も行けそうにない。そんな時に金田(西島秀俊)の死刑執行が決まった。処刑の際の支え役をかってでたら、特別休暇を1週間もらえると言う。(生きることにした。人の命とひきかえに)と平井は自分に呟き、支え役を申し出る。

<小池和洋プロデューサー・門井肇監督、合同会見>
―この作品を作ったきっかけは。ロケ地が山梨なのは、小池さんの出身地と言うのに関係があるんですか。
小池和洋プロデューサー(以下敬称略):原作を読んで惹かれたのが始まりです。 映画を作りたいとは思っても、お金には限りがある。僕らが作るとしたら、面の広がりではなく奥行きで見せられるものを作る以外ありません。この企画はそれにあっていて、お金が無いという事と芸術としての広がりが丁度重なるところにありました。今でこそ、死刑執行にすぐ印を押す鳩山法務大臣の出現や、光市母子殺害事件の差し戻し裁判等で、死刑制度が注目されますが、これをやり始めた時は、まだ今ほど身近じゃあなかった。もうすぐ始まる裁判員制度で、僕らも死刑の判決に関わる事にもなりますから、そういう意味でも今ならタイムリーなんですが。本当に誰もお金を出してくれなくて、「死刑を描いてもヒットしない」と言って断ってくる。君ら二人がやっても駄目だと言ってもらえれば納得するのに、話をずらすから、何が何でもやってやろうと思いまして。

―とても苦労をされたと。
小池:ええ。僕らは二人とも映画の外の世界から来た人間で、だからこそ漕ぎ着けれた。映画界を知っている内側の人の、通常のやり方では出来なかったと思います。総てはずうずうしさと言うか、諦めない姿勢がよかったのでしょう。最初の頃、ちっとも話が進まず、しょげていたんですよ。そしたら救世主が現れて、この作品の顧問の足立さんですが、「ブッキングは俺に任せておけ」と言ってくれました。足立さんは大手映画会社の方なんですが、門井監督と組んで作った僕らの前作「棚の隅」からのお付き合いで、「棚の隅」を観て「ぐらっと来たよ。うちでやろう」と言って、自分のところでかけてくれた人です。それがきっかけになり、「棚の隅」は全国での拡大公開に漕ぎ着けられた。今回も「お前は山梨出身なんだから山梨で撮れ。そしたら山梨放送が乗ってくれる」とか、色々ノウハウを教えてくれました。そんな風に、去年の8月頃からだんだん明るい兆しが見えてきて、最初の出資は小さな物だったけど、繋がりが繋がりを呼び、文化庁がお金を出してくれることにもなり、色々な所の協賛も取れて、僕らがやるにしてはグローバル感が出てきたというか、テーマに相応しい広がりが出てき始めたんです。原作が国内に旅行に行くという設定なので、山梨県内の色々な方面の方に応援してもらったりもあり、そこで撮るのが自然だったと。

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(C)2007「休暇」製作委員会

―主役が小林薫さんで、他にも凄いキャストが集ってますが。
門井肇監督(以下敬称略):プロデューサーが小林さんのファンだったんで、その芝居を撮りたかったんですよね。
小池:それは語弊です。イメージだったからで。
門井:(笑いながら)小池さんからの案に僕も興味を持ちましたし。他の方にしても、配役について良い情報をくれるのは、冷静に全体を見通せるポジションにいるプロデューサーの事が多いんです。知名度も実力もある多くの方が、こんな低予算の作品に関わってくださったのは、本当にありがたいです。今映画がたくさん作られてますが、メジャー系は似通った物が多い。俳優さんというのは本来色々な役をやりたいもんなんで、このような珍しいものに食指が動いたのではと思います。原作や脚本の力というか、テーマに惹き付けられる物があったのでしょう。これが映画化できたのも、原作が持っていた力が大きく作用していると思います。

―小劇場出身で演技派の小林薫さんですが、演技はつけられましたか。
門井:僕の仕事は監督なので演技はつけますが、細かい指示を出すというより、基本的には、小林さんから出てくるものを大事にしました。それも現場ではなく、事前に小林さんの解釈と僕のそれをすり合わせていった形ですね。原作を読み脚本を読みと、よく準備をされる方なので、クランクイン前に電話等でお互いに色々話し合いました。
―金田が何をして死刑になるのかは描かれていませんが。
門井:彼が何をして刑務所に入ったのかとかは、この作品にとって重要ではないので、細かく描く事は不必要だと思いました。この作品が描いているのは生と死、言い換えれば、一人の人の死に加担したおかげで手に入れた休暇で、自分の新しい家族関係を築いていくと言う話ですから、それをブラさない為にも描かないほうがいいと。そちらを描くと、死刑制度の是非とか、可哀相とかそちらに興味が移ってしまいます。この作品では、死刑制度があって死刑執行をする人もいるという事実を伝えたかった。
―そうは言っても、監督の中には設定がおありなのでは。
門井:もちろん僕の中では設定があります。でも僕が話す事で皆さんの解釈を助けるのは本意ではないし、逆に話す事で皆さんの想像を狭めてはいけないので、それをお話しするのは控えたいのです。もちろん僕の設定だけが正解のわけでもなく、それぞれの人の解釈でいいわけですから。

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(C)2007「休暇」製作委員会

―実際に平井のしたような役目の方はいらっしゃるのでしょうか。
小池:いらっしゃいます。処刑で上から落ちると、体がぶれてあちこちぶつかり傷付くので、それを支える役目ですね。1人ではなく2人の事もあるようです。実際には吐瀉物や口や鼻等から出てくるものを被ったりと、誰もやりたがらない大変な役目だそうです。そんなところは我々では解らないので、元刑務官で色々その方面の本を出しておられる坂本敏夫さんに、アドバイザーについてもらいました。
門井:それを忠実に描くとR指定が付いて、観客に年齢制限が出来る。僕としても観賞の幅を狭めるのは不本意だし、でもそれを描かないと成立しないなら描かざるを得ない。描く事が大事かどうかを考えて、ぎりぎりのところでこうなりました。
小池:忠実に描き切れたら、それはそれで又凄いかも知れず、この作品とは別の力を持つものになるのでしょう。原作は処刑の状況を詳しく書いていますが、吉村さんの夫人の津村節子さんから、最初に、文字を読むのと映像を見るのは違うので、そのあたりの表現は気をつけて欲しいと言われました。原作との兼ね合いについて言われたのはそこだけで、後は何も仰いません。
門井:わりに原作に忠実な作品ではないでしょうか。この作品を撮り始める最初に、皆さんにこの作品は死刑が中心ではないとお話したんです。死刑の話ではあるけれど、人間を中心に置くよう演出に気をつけました。だから死刑についてあまり詳しく描き過ぎない様、其方の情報を集め過ぎない様に気をつけましたね。そんな映画はたくさんありますから、あまり詳しくない僕が作るもので良いと。  (犬塚芳美)  (続きは明日)

  この作品は6月7日(土)より、
        敷島シネポップ、第七藝術劇場、TOHOシネマズ二条、
        三宮シネフェニックスほかにてロードショー
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コメント


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吉村昭はいいですね。続きを早く読みたい。今時珍しい朴訥な若者二人の奮闘に興味を持ちました。

森田 | URL | 2008年06月05日(Thu)09:23 [EDIT]


吉村さんの本は読んだ事があるとは思うのですが、今記憶になくて。それより最期に自分で点滴を引き抜いて、積極的に死を選ばれたのが記憶にあります。これもだけれど、生と死に確たる物をお持ちだったのですね。
そんな物語を映画化したのは、本当に素敵な二人でした。よけいな物を欲しがらずしたいことだけを見つめられる思い切りのよさがあります。お話を伺うとどの監督も素敵なのですが、この二人に感じた本物感は格別。友人達にも、素敵な映画作りのコンビにお会いしたと自慢しました。必ず好きなものをこつこつ作り続けてらっしゃるだろうと思います。続きは明朝ですお楽しみに!

犬塚 | URL | 2008年06月05日(Thu)20:46 [EDIT]


お久しぶりです

いつも丁寧な映画紹介、楽しみにしています。
お忙しいとハガキにあったので心配していましたが、映画評を読んで安心しました。
前回の「山桜」は、藤沢周平の好きな私には、見逃しがたいものですが、この映画のお話も興味深かったです。
ノウハウを教えて下さった救世主の足立さん。
本来いろいろな役をやりたい俳優さんたち。
文字と映像の違いを指摘された津村節子さん。
どれも共感を覚えました。そういえば、最近、映画に行ってません。私は、やっぱり「山桜」かな。

大空の亀 | URL | 2008年06月05日(Thu)22:05 [EDIT]


いつも有難うございます

今ネット上から消えた映写室の古い記事を、別のサイトにアップしているのですが、ここで知り合い最初の頃から丁寧なコメントを繰り返してくださっていて、読み返しても感謝に耐えません。こんなに長くつづいたのも、「大空の亀」さんを始め、読み続け励ましてくださった皆さんのおかげです。本当に有難う!
ご指摘の2作品は最近の邦画では群を抜いています。今テレビ版の藤沢作品等の製作で超多忙な家族にも、「見ないと損する。サボっても見て!」と脅しています。セットや衣装等文句をつけようと思ったら文句を付けられる。でも監督や俳優さんの力で映画として世界観を持ったらそんな物は許せる。その逆は絶対なりたたないけれど、映画は観客を引き込んでこそだなあと改めて思いました。ハンカチがいるとは思わず無防備に見たので、途中大変な事になって、そんなときに周りを考えたらバックをごそごそも出来ず、昔の悪がきのようにブラウスの袖口で拭ってしまいました。野江は「大空の亀」に似ていますよ。こうご期待です。

犬塚 | URL | 2008年06月06日(Fri)08:28 [EDIT]


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| | 2012年06月04日(Mon)02:02 [EDIT]


 

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journalist-net | 2008年06月06日(Fri) 07:58


 
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