太秦からの映画便り

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「休暇」監督とプロデューサーの合同会見(後編)

映写室「休暇」監督とプロデューサーの合同会見(後編)    
  ―門井肇監督と小池和洋プロデューサーに伺う秘話―

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(C)2007「休暇」製作委員会

(昨日の続き)
―拘置所とかの撮影は、セットですか。
門井:外観は本物の甲府刑務所を映していますが、中はセットです。これは何処に頼んでも無理な話で、写真は撮れないのですが中を見せて頂けたりと、普通厳しいこういう所にしては協力してもらえたので、それを参考にしました。
小池:後は坂本さんのアドバイスです。
―前作もですが、門井監督は人の再生をテーマに描かれますよね。それと独特の余韻も特徴かと。
門井:ええ、作品が変わっても人間の再生が僕のテーマです。親子とか人間同士のコミュニケーションの中で、人が変化していくのを描くのが僕のやり方ですね。それに設定している総てを描きたくない。大事な部分は観客に委ねたいんです。あまり細かい部分まで描いてしまうと、映画の解釈を狭めてしまうので、のりしろや行間を一杯取っています。テロップとかで、ああだこうだと説明したくないですし。自己主張が強く、偉くなりたいとか思わない方なので、スタイルを変える気もなく、もう少し解りやすい物を作るかもしれないけれど、題材は変わっても今後も同じ様な物を作り続けていくと思います。

―小池さんの前職は書籍の編集者ですよね。
小池:ええ。映画が好きだったのでこの世界に転身しました。でも映画業界の人は「お止めなさい」と言う事はあっても、手を貸してくれる人はいなかった。だったら自己流を貫こうと思いました。案外僕らのような、横から映画に入ってきた者の方が、真摯に映画を作っているのではと思います。エンターテイメントの中に何らかの社会性をくるんだ物、皆が知ってそうで実は案外知らない事を描きたいといつも思っていて、今回それが出来たのではと思います。「映画は作るんじゃあない。観てもらって何ぼだ」とよく聞かされたけれど、それが大事だと思う。足立さんに助けてもらいましたが、人の力を借りてでも上映館を増やす事をしたかった。
―物語にも悪人はいないし、お話を伺ってもこの映画に関わった方は皆良い人ですね。
門井:そうですね。色々大変だったけれど、気概のある人たちが参加してくれました。ギャラどころか、自分の力を発揮する為の機材を借りる予算すらない中で作ったので、感謝しています。色々な人が助けて下さり、良い人ばかりだったと言えますね。

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(C)2007「休暇」製作委員会

― 一番大変だったシーンは。
門井:死刑執行の日の、それに至るまでの大勢の執行官がいるシーンが大変でした。若い監督が、狭い室内にいる大勢のベテランにお芝居をつけるんですからね、胃が痛くなります。でも出来上がったものを観ると、リアルで真に迫っていて良い。こういうシーンを作れたのは、こうして人が集まってくれたからだなあと思いました。
―お好きなシーンは。
門井:金田の妹が面会にやってくるシーンで、余計な事を要求しないで、演技もつけずに二人に任せました。二人を監禁して、カメラを回しっ放しにして撮っています。二人は何も言わず向き合ったままですが、塀の中にいる自分以上に、たぶん外にいる家族は苦しんだはず。言い訳を出来ない事をしたからこそ死刑になるわけで、家族には何も言えないのが本当じゃあないかと。そんなものが滲むあのシーンは好きです。遺書を書けと言われるシーンも、もっと派手な映画なら嫌がったり泣き叫んだりするでしょうが、何も言えない何も書けないが本当じゃあないかと思いました。

―刑務官はもっと官僚的かと思ったのに、この映画では人間的ですが。
小池:坂本さんの話を聞くと、刑務官の間にドラマは無いと。所内で取っ組み合いの争いなんて、とんでもない事ですと仰っていました。
門井:そのままやっても映画にならないですよね。でも行動や感情を抑えたとしても、心は動いていたはずです。彼らの心情を映像にした訳で、嘘と解っていてもやらないといけないので、本当のリアルといかにものリアルの間を撮るのが大変でした。デフォルメし過ぎて安っぽくならないようにと、どの辺が落とし所かを探りながらやりました。
―処刑を察した金田が、独房の壁に頭をぶつけるシーンが印象的です。
門井:あそこは演じるのが難しいところなので、敢えて何も言わないようにしました。西島さんは何も言わない時の方が、出てくるものが良い。テストの時よりカメラが回っている時のほうがいいものが出てくるんです。そんなタイプの人には任せるほうがいいと思う。撮影の前に、どうなるんだろうと西島さんに聞いても、「やってみないと自分でも解らない」と言っていました。それであの頭をぶつけるシーンが出来たのですが、何だか解らないけれど発狂している。その何だか解らないのが大切だと思うんです。

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(5月19日 大阪にて)

―さっきから伺ってますと、お二人は仲も良く絶妙のコンビですが。
小池:(二人で顔を見合わせて)よく喧嘩するよね。
門井:小池さんとは前作からの付き合いで、僕の学生時代の作品を観て一緒にやろうと声をかけてくれたんです。仲が良いかどうかは、喧嘩ばかりしてるのでどうでしょう。一緒にシナリオも作ったんですが、作る側としていつも言うのは、どうしても外せない世界を大事にして欲しいと言う事です。例えばこの中の旅行のシーンで、予算を考えると、列車じゃあなくバス旅行にしたらとかなるんですね。でもここはバスじゃあないだろう。いくらお金がかかっても、列車を借りないといけない。そんな事を言ってたら、鉄道会社に協力していただける事になって良かったんですが、プロデューサーと数限りなく対立するのは、「もっとお金を」ですね。ただ二人ともいい映画を作りたいだけというのは一致しています。
小池:そんな風にして出来上がった作品で、出来映えには自分たちでも手ごたえを感じるので、ぜひ大勢の方に御覧いただきたいと思います。    (犬塚芳美)


   この作品は6月7日(土)より、
      敷島シネポップ、第七藝術劇場、TOHOシネマズ二条、
      三宮シネフェニックスほかにてロードショー


<会見後記:犬塚> 
 少し長いのですが、映画つくりの裏側の興味深いお話なので、そのまま記載しました。作品の完成度が高く、技術的にも精神的にも熟達と老成を感じるので、ある程度の年齢の方を想像していたのです。お二人にお会いして、この若さでこの境地というのに感服しました。本作だけでなく今後も楽しみです。死刑が中心ではないとはいえ、登場人物やその物語がしっかりと描かれているからこそ、もうそこは映画で充足し、観終えた後に、その後ろの死刑制度を考える。罪を犯した人を、時間とお金をかけて善人に戻し、その上で絞首台に送る仕組みの是非に迷います。会場を出る時、思わず「ヒットしそうですね」と呟くと、並んだ二人が嬉しそうに「ありがとう御座います」と返して下さいました。映画への愛に溢れるこのコンビから、もう目が離せません。
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| | 2012年08月05日(Sun)03:53 [EDIT]


 

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    ―門井肇監督と小池和洋プロデューサーに伺う秘話― (昨日の続き) ―拘置所とかの撮影は、セットですか。 門井:外観は本物の甲府刑務所...
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journalist-net | 2008年06月09日(Mon) 20:08


 
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