太秦からの映画便り

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映写室 「いま ここにある風景」合同会見(後編)

映写室 「いま ここにある風景」合同会見(後編)   
 ―人が変えていく自然の姿を映し続ける写真家―

(昨日の続き)

―日本で写したい所はありますか。
バーティンスキー:アーティストとしては移行期、変りつつある風景に関心があります。中国は今移行期にあるが、日本は其処を通り過ぎて停滞している。撮るとしたら少しリサーチしないといけない。今の中国のなりふり構わない状態は日本だったら戦後とかで、もうすでに通り過ぎて落ち着いた状態になっている。ただ昔は産業の島で、今は見捨てられている長崎の軍艦島には興味があります。

imakoko-3.jpg
COPYRIGHT EDWARD BURTYNSKY

―中国以外で興味のある国はありますか。
バーティンスキー:ガスやオイルに関心があるので、ドバイやアブダビ等の中東です。カナダの北部にも油田があるので今それを撮っている。オーストラリアではBHCと言う会社の世界最大の鉱山を撮っていて、ここの資源が日本や中国、カナダ等に輸出されています。これは上海での精製過程を撮影していて、今度はその資源の大元に辿り着いたと言う訳です。

―貴方が捉えた美しい風景は、破滅への過程でしょうか。再生への過程でしょうか。
バーティンスキー:再生と言うよりも、やはり破滅的方向に向かっていると感じています。今のようなペースで資源を使い続けていたら、何時かアクセスできなくなる。資本主義は需要と供給のバランスで成り立っていて、経済成長に依存していますが、その経済は資源に依存しています。資源を使い切ってしまったらどうなるのか。経済成長は止まってしまう。つまり資本主義の寿命も尽きつつあるのではないでしょうか。65億の人類は危険な方向に向かっていると思うのです。私の作品を理解する一つの視点が、地球外から来たエイリアンに、地球で今何が起こっているかを写真で見せていると、考えるといいかもしれません。
―政治的な圧力を受けた事はありますか。
バーティンスキー:中国でももちろんあったし、アメリカでもそういうものを感じる事があります。私の写真は、企業や政府がからんだ大掛かりな開発を写す事が多く、何度も締め出されている。交渉には細心の注意が要ります。例えば最近では、アメリカの鶏肉加工では最大の工場に撮影に行ったが、許可が下りなかった。以前は自分のテーブルの鶏肉がどこから来ているのか知るのに何の問題もなかったが、今はそれを知るのさえも難しくなってきています。

―公開しての反応はいかがですか。日本人にどう見て欲しいですか。
バーティンスキー:この映画がアジアのマーケットで上映されるのは日本が初めてで、どのような反応かは正直には言って予想できません。日本と中国の複雑な関係を聞いているので、この映画が描いた中国を日本の皆さんが(やっぱり!)と思うか、(知らなかった!)と思うか楽しみです。ただ感じていただきたいのは、世界中が相互依存にあるということです。アメリカで起こった問題が、次々と世界に波及していく。この映画を見ることで、その相互依存が健全なのか不健全なのかを考えて欲しい。何処かの企業がよその国へ進出する事で、その国の大切な物を搾取しているのではないか疑って欲しい。自分の国で守っている環境基準を、進出した国でも守っているかどうということです。安い賃金で物を作り、環境を汚染したら、それが水や空気の汚染となって、やがて世界を回っていくと言う仕組みに、気付いて欲しいのです。

imakoko-m.jpg
COPYRIGHT EDWARD BURTYNSKY

―中国での公開はどうですか。
バーティンスキー:中国ではすでに2007年から海賊版のDVDが出回っています。でももしこれを正式に劇場で上映するとしたら、検閲に引っかかるシーンがある。上海の豊かな階層の女性が「立ち退かない人には…」と言うシーンとかは、人権に関わるので直さないといけないでしょう。この映画は中国を批判してはいないが、中国の凄まじい発展スピードを手放しで賞賛してもいない。開発される中国に問題を投げかけているので、当人達には色々不快感もあると思います。

―自然と共存していてご自分が住みたい国、ここで警鐘を鳴らす、相互依存から遠い暮らしをする地方はありますか。
バーティンスキー:自然が手付かずに残っているのは、カナダ北部や極東地域、ロシアのシベリア、南米の奥地等でしょうか。だんだん少なくなっています。ただ私は、人の手で変っていく自然に興味があるので、それらを写したいとは思いません。自分が住みたいような人が自然と共存してる所というと、例えば北イタリアのトスカニー地域は素朴な暮らしをしています。家族が一緒に暮らし、暮らしのほとんどは食べ物を作ることに費やされ、友人との団欒がある。食べ物は自分で創るのが基本で、近代的な暮らしとは距離を取って、人生や生活を楽しんでいます。都会ではストレスにさらされ、前に前にと進んでいるが、人生の大きな楽しみを見失っているのではないか。もし突然世界経済が破綻して、紙幣が紙くずになっても、そのまま暮らしていけるのは誰だろうと考えると、北イタリアの人々を思い出すのです。(犬塚芳美)

imakoko-kanm.jpg
(6月10日 大阪にて) 

<会見後記と作品の感想:犬塚> 
 工場で黙々と働くあまりにも大勢の人を見たせいか、自分たち人間が蟻になった気分。地表にびっしりとたかって、せっせと地球を消費しているシュールな夢を見ました。なんだかんだ言っても、生きるとは地球を破壊する事です。中国は人も多いし国も大きいから、一度に近代化に動く迫力が怖いほどに凄い。まるで皆がいっせいに船の片方によるみたいで、ひっくり返らないかと心配になります。それでも、文明国の排出物を一身に引き受け、危険も顧みずもくもくと再生産してる姿に胸が詰まりました。わき目も振らず単純作業に没頭する女性の姿が忘れられません。こんな人たちが大勢いる国に、日本の製造業が勝てるわけがない。中国がこれからも世界の工場なのは間違いないでしょう。
 少し前の東南アジアに行くと、先進国が札束でその国を汚しているのを感じて嫌だったけれど、中国はそれが外部の人じゃあなくて、利に長けた同国人。他国だけに利用されてなさそうな所はさすがですが、益々貧富の差が広がるんだろうと辛くもなる。
 ところでエドワード・バーティンスキーさんの写真は、視点が人より地球にあって雄大。もしかしたらと思ったらやっぱりカナダの方でした。自然を大事にして、地球に住まわせてもらってる事を忘れない国民性ですよね。アメリカで現代アートをやってるカナダ国籍義兄が、よくそんな話をします。鋭くても大らかで、丁寧に質問に答えてくださいました。映画もいいけれど、写真集が欲しくなります。

  この作品は、7月26日(土)よりテアトル梅田
          8月2日(土)より第七藝術劇場
          8月23日(土)より神戸アートビレッジセンターで上映
          9月京都シネマで上映予定
スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

すばらしいインタヴュー、見ほれ読みほれしました。犬塚さんの文には、魂を揺さぶる力を感じます。あまり映画館には足を向けないわたしですが、行こうかなという気になりますね。ところで言葉は英語だったのですか?

かたせ | URL | 2008年07月26日(Sat)12:39 [EDIT]


英語も現地の言葉もあったと思いますが、ひたすら日本語の字幕を追っていました。といっても、そんな言葉以上にこのドキュメンタリーは映像の力が大きい。褒めていただきましたが、もしこのインタビューに読み応えがあったとしたら、私の力ではなく、写真家の思いとこの映画の力です。中国のアイロン工場を映した冒頭シーンは圧倒されて息を呑みますので、ぜひ映画館に足を運んでください。ドキュメンタリーといっても、人類が食い尽くす地球をアート作品で切り取ったバーティンスキーさんの写真が散りばめられているので、端整です。こんなに厳選された映像を久しぶりに見ました。

犬塚 | URL | 2008年07月27日(Sun)00:14 [EDIT]


ご紹介のドキュメンタリー3本、どれも見たくなりました。この夏はドキュメンタリーで行きます。

keiko | URL | 2008年07月27日(Sun)23:08 [EDIT]


偶然なのですが、良いドキュメンタリーの紹介が続きました。どれも甲乙付けがたくて。
海外から入ってくるドキュメンタリーはどれも視点が大きくて、日本に多い身近なちいさなものを撮ったものとは違います。ドラマ性を含んでいながら、たまたま手法がドキュメンタリーだったと言う3作品ですが、ドキュメンタリーだからこその迫力。骨太の精神を感じます。ぜひ大勢と一緒にごらん下さいね。

犬塚 | URL | 2008年07月28日(Mon)07:58 [EDIT]


 

トラックバック

TB*URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

映写室 「今ここにある風景」合同会見(後編);犬塚芳美

  ―人が変えていく自然の姿を映し続ける写真家― (昨日の続き) ―日本で写したい所はありますか。 バーティンスキー:アーティストとしては移...
[続きを読む]

journalist-net | 2008年07月28日(Mon) 07:44


 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。