―押井守監督、西尾鉄也作画監督、加瀬亮さん―
若い世代に圧倒的な人気を誇る、森博嗣原作の「スカイ・クロラ」シリーズが、押井守監督によって映画化になりました。押井監督は「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟等世界中の映画人に影響を与えた、日本の誇るアニメーション映画監督です。「キルドレ」という不思議な存在に吹き替えで命を吹き込んだのは、「バベル」でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた菊池凛子さんや、「それでもボクはやっていない」で去年の映画賞を総なめにした加瀬亮さんという、若手のそうそうたるメンバー。7月7日(月)御堂会館での試写に先立つ、押井守監督、キャラクターデザインをされた西尾鉄也作画監督、加瀬亮さんの舞台挨拶のレポートです。

(7月7日大阪にて)
<その前に、「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」とはこんなお話>
舞台は仮初めの平和が訪れた今とよく似た時代。平和を実感する為にショーとしての戦争が行われ、「キルドレ」という思春期の姿のまま永遠を生きる子供たちが戦う。カンナミ(声・加瀬亮)が欧州の前線基地「兎離州(ウリス)」に配属され、スイト(声・菊池凛子)たちに迎えられる。カンナミは飛行機の操縦と、自分が「キルドレ」と言う以外何も記憶が無い。同僚は意味ありげな目を向けても何も語らなかった。
<押井守監督、西尾鉄也作画監督、加瀬亮さん舞台挨拶>
加瀬亮さんの、「函南優一の声の加瀬亮です。ゆっくり映画を楽しんでください」と言う挨拶で始まった。
加瀬亮さん(以下加瀬):声優初挑戦は、何から何まで勝手が違って大変で、監督たちからしつこいと言われました。いつもは体を使って正解を探していくのに、マイクの前でじっとしているのは窮屈でした。後ろにいた監督によく体が動いていたと言われました。
押井守監督(以下押井):本当はノイズが入るから体を動かすのは止めて欲しいんですが、よく動くんですよ。彼の場合はもがいていると言うか、苦しそうでした。でも無意味な動きはどんどん少なくなり、空を飛ぶシーンで(くぐもった声を採るために)マスクをすると、自信が出てきたのがわかる。俳優さんは物があると変わるんだなあと思いました。
加瀬:地上の何気ないシーンとかは、距離感が掴めず戸惑いました。

(7月7日大阪にて)
押井:俳優としての加瀬さんは、しつこくてなかなか納得しない疑問の多い人です。彼の場合お腹の中に演出家がいて、その人が納得するまで迷うタイプみたいですね。
加瀬:途中では迷いましたが、出来上がった今は納得しました。不思議な物語ですが、今の時代に励ましになる作品です。
西尾鉄也作画監督(以下西尾):僕は絵のデザインですが、完成して声が入ると(ああ、こんな人間だったのだ)と、自分の書いた絵のイメージが具体的になる。最後の一筆を俳優さんたちが入れてくれました。ポーランドのロケハンに20日以上行ったんですが、ポーランドに入ったとたん、いつもは物静かな監督のテンションが一気に上がって皆びっくりしましたね。
押井:はしゃいだつもりは無いけれど、以前そこに4ヶ月いて映画を作ったので、懐かしい気分になったんです。僕は向こうにいるほうが生き生きしているかもしれませんね。2ヶ月以上ロケハンで一緒にいて、これから2年間一緒に映画を作るんだと言う覚悟が出来ました。この作品のテーマは言葉にすると簡単だけど、言葉にすると何か違ってしまうそんな事です。生きるとはどんな事かと言う本が一杯出ているが、人生は如何に生きるかではなく如何に耐えるかだと思う。50年間生きてきた自分の思いを込めました。

(7月7日大阪にて)
西尾:自分も何時までたっても子供っぽくチルドレのようなものです。劇中チルドレが立派な大人になりたいかと聞かれるせりふがあるが、僕も早く大人になりたいと思う。
加瀬:ボクはその役を演じて実感をもって理解しました。どこか大人に成り切れないというのは、年齢に限らなくて今の多くの人に当てはまるのではと思います。吹き替えなので2日間の参加でしたが、早く年齢を重ねて大人になりたいと思いました。
押井:大人になると楽になります。若いころにあった、こう見られたい、こうありたいという自分への過大な要求が消えて、等身大になるというか色々な事を諦められる。それが大人です。ボクは2度と再び子供にはなりたくありませんね。
加瀬:監督が始めて真っ直ぐに伝える物がありますので、ぜひご覧下さい。
<レポート後記:犬塚芳美>
このアニメーションは動きを表すコマ数が少なく、色調も抑えていて、アニメだと思ってみると戸惑うような静かな世界観を持っています。絵もセリフも無駄な物が一切ない、選び抜かれた必要最低限で成り立たせているわけです。そんな作品を作った方たちだけに、舞台でのやり取りもある種哲学的、知識で膨らませていただかないと解りにくいかもしれません。ぜひ映画をご覧になった後でもう一度この舞台挨拶を読んで下さい。この作品のポイントは「キルドレ」、其処に監督の思いの総てがこもっているようだと、改めて思いました。
この作品は、8月2日(土)より全国でロードショー


