太秦からの映画便り

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映写室 「火垂るの墓」合同会見(後編)

映写室 「火垂るの墓」合同会見(後編)    
 ―日向寺太郎監督と主演の吉武玲朗さんに伺う撮影秘話―

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(C)2008 「火垂るの墓」パートナーズ

<昨日の続き>
―確かに戦争の記憶は、世代的に一部の人のものになっていますね。
監督:それと、実写版を撮るに当たって、清太のキャラクターをはっきりさせたかった。アニメや短編なら曖昧でもいいけれど、長編で主役だと、どういう人間で何を考えたかを描かないと2時間近くが持ちません。僕はアニメ版でも原作でも、清太が優等生過ぎると思っていました。優しいお兄さんなのはいいけれど、スポーツが出来たりと完璧過ぎる。もっと不完全な人間のほうが共感を呼ぶだろうと、喘息と言うコンプレックスを付け加えたんです。父が軍人なのに、自分は喘息で軍人になれるかどうか解らないという不安、そんな部分のある人間にしたかった。それと「どじょうすくい」が得意だと言う、おどけた面ですね。
―「どじょうすくい」は凄く上手でしたね。練習が大変だったのでは。
吉武:1ヶ月の間で「どじょうすくい」と剣道と方言をマスターしないといけなかったんです。「どじょうすくい」は凄く難しいと言う話だったので、自分でも出来るかどうか不安でした。踊りをマスターするのも大変なのに、歌いながら口三味線でというと、普通は出来るまで何年もかかる。でもそれを1ヶ月でやったら凄いんじゃあないかと思って、頑張りました。練習風景をDVDにとって家で見たり、色々工夫しました。「どじょうすくい」は全部タイミングなんです。左足1歩出すのが狂うと、後がおかしくなって。
監督:彼は自分の事なので言わないけれど、身体能力が凄いんです。撮影の時に名人の方に来ていただいたら、上手いのに感心されていました。口三味線は無理だと言われていたのにそれも出来て、驚いていましたね。あんまり上手だから東京の教室で教える事になった位です。剣道も大変なんですよ。頭に手ぬぐいを巻きますが、何でもなくやってるようで、普通はなかなか出来ないんです。
吉武:今でも長いものを見るとつい頭に巻きそうになるというか、あ、これいけるなと思ってしまいます。(笑い)

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(C)2008 「火垂るの墓」パートナーズ

―アニメ版のドロップのシーンを、毎年夏になると見ていた気がしますが。
監督:ドロップはアニメのオリジナルなんです。アニメ版も僕らと同じように、短い原作の何処を膨らませるか工夫していて、それがドロップなんですね。だから本当はドロップを止めたかったんですが、全部無くなるとあまりに厳しい「火垂るの墓」になってしまう。佐久間製菓さんがドロップ100周年で協力したいと言って下さり、アニメのイメージを裏切らないように最低限入れました。いかにもなドロップのシーンは撮っていないので、他のスポンサーが心配しましたが、社長とかはこの作品に満足して下さいました。
―彩奈ちゃんとのコミュニケーションはいかがでしたか。
監督:大変は大変ですよね。(笑い)
吉武:宿舎が一緒なので、行き帰りのマイクロバスの中でスーパーで買ったおもちゃで遊んであげました。それだけでもコミュニケーションになったかと思います。彩奈ちゃんはバスの中で脚本を楽しそうに読むのですが、楽しそうな声なのに死にそうな顔を演じているのが凄くて。
―撮影で一番大変だったシーンは。
監督:二人が楽しかった頃を思い出して、食べ物の話をするシーンで長回しをしています。彩奈ちゃんはセリフはちゃんと覚えてて言うんだけれど、他に興味があるものが出るとそちらを見てしまう。でもあそこでカットを使いたくないので、10テイク位いったでしょうか。彩奈ちゃんの集中力を切らさないようにするのが大変でした。逆に学校のシーンとかは、彩奈ちゃんが後ろのスタッフの動きをジーっと見てるんですよ。カメラを回しっ放しにして撮っているんですが、芝居半分素が半分のところが良かったと思います。カメラが動く時が大変で、まだ幼いからどうしてもカメラの方を見てしまうんですよね。

―戦争を描いた作品を撮られて、何か変化がありましたか。
監督:僕の中で60年と言う時間が縮まったのは確かです。自分の中に戦争体験という核が無いので、映画を作る上で必死で考えざるを得なくて、色々な事を考えましたから。大変だったけれど、これを撮ってよかったと思います。これを撮れたのはプロデューサーの親心なんですが、テーマ的に背伸びせざるを得なかった。又子供が主役の映画で、演出としても背伸びせざるを得なかった。演出で迷っている時、ベテランの俳優さんにならどうですかねえと相談できても、子供にはそれが言えませんからね。2つの事で自分としては無理してよかったと思います。でも黒木組の重鎮たちが助けて下さいました。こんな作品で一番大変なのは美術なんですが、それを木村(武夫)さんがしているから、心配しなくていい。焼け跡とか素晴らしいものです。又具体的な動作としては、スクリプターの内田さんが戦前のことを知っていて、例えばご馳走様と手を合わすのは多分戦後のものだと言うので、今回はやっていません。

―意外だったのですが、松田聖子さんや松坂慶子さんの配役は。
監督:松田聖子さんの役は、出番が少ないけれど印象に残らないとまずい。華やかでなおかつ母性を持っている人、しかも意表をついたキャスティングと言うのでお願いしました。包帯でぐるぐる巻きのシーンも、皆は吹き替えかもと言っていたのですが、嫌がらずにやってくださいました。目が出てますから代役だと困りますよね。松坂慶子さんの役も、単に厭味な小母さんではなく、こういう状況になったら人間はこうなるんだろうなと言う説得力がいる。根っからの悪い人ではないというキャラクターが本人にあって、見る人がそう思う人をとお願いしました。小母さんの複雑な内面描写の為にも、未亡人の寂しさを出したいと言ったら、西岡さんが亡くなったご主人からの手紙が、後れて届くと言うアイデアを出してくれました。

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(6月27日 大阪にて)

―出来上がったものを観ていかがですか。
監督:今は反省が多いですね。1作目も反省はあったが、撮影も楽しかったし撮り終えた喜びが大きかった。でも今回は撮影も苦しかったし、終わってからも映画的な表現で(あ、ここをこうすれば良かった)と気付いたことが多いんです。この作品は西岡さんと言う力のある脚本家の力もお借りできました。力のある脚本家と組むとこんなに膨らみ楽なのかと思いましたが、それでも一つに還元できないプレッシャーで、苦しかったですね。僕としては精一杯背伸びした作品です。
―吉武さんはどうでしょう。学校(現在高校2年生、撮影時1年生)とかで戦争の話をしますか。
吉武:この映画に参加して戦時中のことが少し解りました。でもそれを学校で友達に話すかと言ったら、中々話せません。今の高校生は、戦争を考えるより恋愛や遊びに夢中です。この映画も友達たちが見に行くよと言ってくれるけれど、僕に興味があるからで、戦争の話に興味があるわけではありません。そこが大変ですが、この作品でそんな風にのんびり出来る、平和の大切さ等を伝えられたらと思います。(犬塚芳美)

  この作品は、岩波ホールで上映中
      8/2(土)より梅田ピカデリー、なんばパークスシネマ、布施ラインシネマ、
         MOVIX堺、MOVIX京都、神戸国際松竹で上映


<会見後記:犬塚> 
 アニメ版の浸透で「火垂るの墓」は大好きと言う方と、可哀想だから見たくないという方がいます。その両方の観客を見据えて、なおかつ知らない戦争を描いた日向寺太郎監督、真面目なお人柄から、大きいプレッシャーで真正面から向かわれたのだと、お話からよく解りました。名場面は何と言っても小さい蛍の墓の並ぶシーンで、誰もの命がそのまま消えてしまいそうな儚さが映っています。主演の吉武玲朗さんは濡れたような大きな瞳が印象的で、学生服の似合う古風な少年も普段はもちろん現代っ子。大人びたようでもあり、末っ子の姿も垣間見え、清太に重なってきました。この少年が「どじょうすくい」をマスターしたなんてと、秘めた役者魂に驚きます。もう一人の主役、おかっぱ頭の節子を演じる畠山彩奈ちゃんも儚げで可愛いですよ。清太の「節子!、節子!」と言う悲鳴のような声音と、節子の「ドロップ上げましょ」という声音が忘れられません。セルフのトーンが素晴らしい子役二人の名演をぜひ劇場で御覧ください。又脇を固める大人の俳優陣の豪華さも見所で、こちらもお楽しみに。
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| | 2008年08月01日(Fri)07:24 [EDIT]


ぜひごらん下さい。演出が少しギクシャクしてる気もしますが、これだけのプレッシャーの中で監督が作ったんだなあと、会見の後では逆に好ましくも思いました。

犬塚 | URL | 2008年08月03日(Sun)10:16 [EDIT]


実写版の印象が強くてどうも・・・。ラストシーンに含みを持たせたのはいいと思いますが。少年が上手いと思いました。

mamoru | URL | 2008年08月04日(Mon)09:10 [EDIT]


吉武さんが上手くて

アニメ版の印象ですね、きっと(私もそそっかしくて、よくご注意を受けます)。
本当言うとインタビューの後半に年齢を伺うまではもう少し年下の方かと思っていました。高校生と伺い、だからこそ丁寧に演技プランを立て、節子を守るお兄さんの役が出来たんだと納得。「皆が節子役が上手いと言うけれど、それは彼がしっかり支えているからで、本当は彼が上手いんです」と、私たちには解らないところをフォロー。吉武さんの役者魂に感心した風情が随所に見て取れました。かn
悪しいと言えば悲しいけれど、やっぱり戦争から時間がたって、見ているときはリアルタイムでも、少し時間がたつと昔話になってしまいますね。その辺りが戦争の悲惨さを語り継ぐ事の難しさかと。

犬塚 | URL | 2008年08月06日(Wed)07:17 [EDIT]


 

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journalist-net | 2008年08月06日(Wed) 07:02


 
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