太秦からの映画便り

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映写室 NO.163 同窓会

映写室 NO.163 同窓会  
   ―お盆の帰省と同窓会―

 高校の同窓会がいつもお盆にあるせいか、この季節になると故郷や同級生を思い出す。毎日を楽しみながらも都会に憧れて飛び出す日を今か今かと待っていた田舎での暮らし、過剰だった自意識と夢やほのかに憧れた男の子たち。都会育ちの方には解らない感覚だろうが、高校時代とは巣立つ前の故郷の記憶なのだ。
そんな気持ちにぴったりの作品が完成し、しかもお盆に公開になります。夢を実現した人も、挫折して途中で進路変更した人も、同級生の前では昔に返って人生の小休止。多感な頃を一緒に過したと言う、同じ根っこがあるからこそ、すべてを認め合える。同窓会とはそんな優しさに包まれた再会の場所だ。そんな雰囲気と共に長崎弁の暖かさが心に染みる作品です。

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(C) 2008「同窓会」製作委員会

荒筋
 映画プロデューサーの南(宅間孝行)は高校時代の憧れだった雪(永作博美)と結婚し、仕事は順調だが子供がいない。不倫中の新進女優にそそのかされ離婚を口にすると、雪はあっさり承諾。怒ったのは、昔雪を諦めた同級生だった。雪と別れた南は全てが狂い始める。一方雪は、思わぬ体の異変に気付く。そんな時、東京で同窓会をしようと…。


 <監督・脚本はサタケミキオ>、主演は宅間孝行。…と、名前を使い分けているけれど、どちらも同一人物で、彼こそが劇団「東京セレソンデラックス」の主宰・作家・演出家・役者をマルチに務める男。今を時めく「花より男子~ファイナル~」の脚本家と聞けば、ああ、あの人かとハッとする。初監督作品に、誰もが思い当たる話を微妙な切り口で裁いてぶつけて来た。主人公が自分の原点の故郷に帰り、昔を思い出して再起を誓うように、宅間も自分の根っ子の部分を差し出して、映画の成功を願っているのだろう。1970年東京生まれの時の人も、根底には意外な浪花節が流れていそうだ。奇を衒わないせりふと作風が温かい。

 <南は映画プロデューサーといっても、カッコいいわけでもなく>、ちょっと間の悪い男。時代の先端にいながら、何処か田舎の匂いがする。その辺にいそうなリアリティが持ち味の宅間が主役になった事で、作品にB級感が生まれ、今乗りに乗っている永作や鈴木砂羽とのアンバランスさが絶妙だった。そのせいか永作のさり気無くて可愛い妻振りと、「ひめ」と呼ばれる鈴木砂羽のキャリアウーマン振りも地に足が付いて、騒々しい同級生の面々も馴染む。回想する高校時代を演じる少年少女が、ちょっと古風でほのぼのとしているのも、思い出はいつもセピアに霞むということだろうか。あの頃にプレイバックしたくなった。それでも、宅間の存在感が全てを上回って未だに消えない。姿かたちではない、内面から滲み出る物のようだ。

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(C) 2008「同窓会」製作委員会

 <人生を振り返った時、一番懐かしく甘やかな時代は何時だろう> 私の場合は断然高校時代だ。小・中学時代はまだ子供だから、未来はまるで未知数だし、懐かしさはあっても甘酸っぱさは笑い飛ばせるほどの物。大学になると今の自分に近く、誰がどう変わるかも予想が付くから、再会しても意外性が無い。しかもこの年代の恋となると結婚に近過ぎて、甘やかと言うより辛過ぎたりもする。会いたい様な、会うのが怖い様な、だからこそ会った時の一気に氷解する時間と打ち解けようが嬉しいのは、やっぱり高校時代の同級生だ。

 <そんな時に始まって大勢が馴れ初めを>知っている結婚は、誰もが二人に自分の夢を重ねる。彼らの幸せがまるで自分たちの青春の証しであるかのように、思うものだ。だからこんな結末に外野が黙っているわけが無い。南が二人の関係が微妙なこんな時期に同窓会を開いたのは、一肌も二肌も脱ぎそうな面々のおせっかいを何処かで期待してる事になる。皆もそれが解っていて、それでも気付かないふりで集まって、何とか二人の仲の修繕の役に立てば良いと思える位に、同級生は優しいのだ。そんな雰囲気を、本人たちの感情以上に周りの心配や思惑を丁寧に描いて説明していく。

 <ところで、話は幾つかお互いの誤解に>繋がる引っ掛けがある。大よその察しが付いたものも、意外な種明かしに(こう来るか!)と驚いたものもあった。大切な人の前では誰もが自信をなくして、動作の一つ一つを勘繰るもの。実人生もそんな具合に誤解や思い違いで成り立っているのかもしれない。それが悲劇でもあり人生の豊かさでもあるとこの作品で思った。つぼを得た話にすら泥臭さを加えて、独特の暖かさに変える宅間の世界観は癖になりそう。
同級生と言うのは不思議なもので、昔それほど仲良く無くても、否ライバル同士すらも、時間が同じ時代を生き抜いた戦友に変える。どこか懐かしいこの映画が、まさに皆の同窓会だ!(犬塚芳美)

   この作品は、8月16日(土)よりシネマート心斎橋で上映
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映写室 NO.163 同窓会:犬塚芳美

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