太秦からの映画便り

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映写室 NO.166 TOKYO!

映写室 NO.166 TOKYO!
― 東京の疾走感に刺激されて―

 漫画、アキバ系、寿司、禅と日本の文化を表す言葉が、いつの間にか世界の共通語になった。そんな文化の中心東京は、外観は巨大な世界都市なのに、他所とは違う時間や文化の内蔵で、クリエーターを触発し続けている。今までもここを舞台に、エキゾチックさを強調した映画は色々作られたが、もっと深く東京の特質に迫る作品が出来た。ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノという3人の監督が、TOKYOを舞台にそれぞれの物語を展開するが、新鮮な外国目線ながら、その視点は意外に私たちと近い。3編のどれもが、東京という猛スピードで疾走する都市と人々のずれに触れています。

1.TOKYO! <インテリア・デザイン>監督:ミシェル・ゴンドリー(仏出身・NY在住)

tokyo-s.jpg

 <荒筋>恋人アキラ(加瀬亮)が撮った映画を持って、一緒に東京に出てきたヒロコ(藤谷文子)は、友人の部屋に泊めてもらう。アパートを探すが少ない予算ではまともなところが無い。バイトを探してもアキラだけに見つかる。上映会が終わり、皆に賛美されてご満悦のアキラの傍らで、気が付くとヒロコは心の辺りがぽっかりと空洞になっていた。
 <ミシェル・ゴンドリーはもともとミュージック・クリップ界>の鬼才で、時間軸を複雑に交差させた「エターナル・サンシャイン」の監督でもあり、手法は別でも、今回も一人の少女の空虚さをシュールな映像に変えていく。
 「東京」という言葉で監督の捉えたのは、地方から出てきて暮すことの大変さで、それを金銭と精神の両面から描けば、巨大都市の無常さとクールさに少女は弾き飛ばされそう。人はどうやってこの街にしがみ付き、溶け込むのだろうか。

 <うつろな表情と頼りない歩き方で>ヒロコの孤独を感じていたら、映像はどんどんシュールに心象風景をなぞり始める。自分だけが取り残されて、居場所が無く心にぽっかりと開いた穴。ひょろひょろと歩き、隙間に忍び込み、街角で見かけた男への寄り添うような思慕。寂しさから自分が消えて無くなりそうな感じが、心象風景としてリアルだった。この辺り監督の暮すNYも同じなのだろう。作品に漂う優しさは、まるで監督が少女の化身の椅子に座る男のようで、少女を柔らかく包み込んでいく。都会に出てきた誰もが、寄り添える誰かを見つけて、少ずつ、心の空洞を埋めていくのかもしれない。ここらあたりは大人のファンタジー。ヒロインの虚ろさを藤谷文子がふんわりと演じて、後半の魂の広がりへと繋げています。

2.TOKYO! <メルド>監督:レオス・カラックス(仏出身パリ在住) 

tokyo-1.jpg

 <荒筋>渋谷の喧騒の中、マンホールから謎の人物が現れる。彼はメルド(ドゥニ・ラヴァン)と言う男で、赤毛、長い顎鬚、ボロボロの服という異様ないでたちで、心臓辺りに手を当て大またに闊歩し、又マンホールに消えていく。地下には戦車等色々な武器が山積していた。手榴弾を投げたことから特殊部隊に拘束されるが、世界各地から届く彼の怪情報は、…。

 <この街はいったい何所だろう> 「ポンヌフの恋人」等の主演で知られるドゥニ・ラヴァンが、くたくたの上下で闊歩すると、東京の街が無国籍になる。街って何だろう。街に顔なんて無いんじゃあないか、歩く人こそが街の顔だと気付かされるのだ。メルドに驚く日本人の方が映画的には異邦人。一人の男が巻き起こす風が一瞬で街を塗り替える様は見事というしかない。それに私たちは地上でちまちまと日常を送っているが、その足の下にはアナーキーな世界が広がっているかもしれないというこの世の虚構性。マンホールは果てしなく続く暗闇で、一文字菊と紙幣を食べて、世界で3人しか話せない言語を使う男とは、かっての3国同盟の名残だろうか。
 <アバンギャルドなお話と映像に煙に巻かれながら>、1人の俳優の存在感の大きさに魂を揺さぶられた。全ては東京とスクリーンを舞台に、自由に遊び回った鬼才レオス・カラックスの力技だと思う。

3.TOKYO! <シェイキング東京>監督:ポン・ジュノ(大韓民国出身・ソウル在住) 

tokyo-m.jpg

 <荒筋>一人暮しの男(香川照之)は家を出ないままもう10年。父親から送られてくるお金で食事を注文し、目をあわさないように受け取り本を読んで暮している。今日も土曜毎のピザを注文するが、うっかりガーターベルトをした配達の少女(蒼井優)と目が合い恋に落ちた。翌週も注文するが届けてきたのは店長(竹中直人)で、少女は引きこもりになって家から出ないと言う。
 <他人と顔を合わせるのが怖くて>、目を逸らして暮らす中年男、引篭もりの主人公が香川照之という重さがなんともリアルだった。理由は解らなくても、びっしりと積み上げたピザの空箱、本等々、そんな中で、ひざを抱えて椅子にうずくまる男からは、世間への恐怖と拒絶、鬱積した思いが伝わってくる。香川の独断場だ。
 <今引篭もりの人が多い> 世の中のスピードについていける人ばかりじゃあない、壊れないように引篭もって自分のペースを守って生きるのも自衛手段なのだろう。其処に起こった地震(シェイキング)、建物だけじゃあなく男と少女の心も揺り動かす。男に会った後で彼女の方が引篭もりになるのは、偶然だろうか。「殺人の追想」等で有名なポン・ジュノは、韓国という同じ東洋人の監督らしく、湿っぽい感情を、一番ねっとりと表現している。

 ここに映っているのは、東京ではなく「TOKYO」。3人の鬼才を刺激した巨大都市は、今日も疾走し変貌を続けている。(犬塚芳美)

  この作品は9月6日(土)より、シネマート心斎橋、梅田ガーデンシネマ、
                    MOVIX京都等で上映予定。
スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

TB*URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

私書箱

池袋の私書箱の紹介です
[続きを読む]

激安!池袋の私書箱新規オープンです | 2008年09月03日(Wed) 17:30


映写室 TOKYO!:犬塚芳美

― 東京の疾走感に刺激されて―  漫画、アキバ系、寿司、禅と日本の文化を表す言葉が、いつの間にか世界の共通語になった。そんな文化...
[続きを読む]

journalist-net | 2008年09月10日(Wed) 04:51


 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。