太秦からの映画便り

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映写室「バックドロップ クルディスタン」監督インタビュー(後編)

映写室「バックドロップ クルディスタン」監督インタビュー(後編)     
―野本大監督に伺う「クルド難民って?」―

(昨日の続き)
― 一般的なクルド人はどうなのでしょう。
野本:嘘吐きだと言う人も多いですね。しかもこのお父さんがクルド難民の象徴のような存在だったので、クルド人全体にそんなイメージを植えつけてしまいました。ただこの映画は、トルコやニュージーランドに一家を追いかけて行っていますが、お父さんの嘘を暴くのが目的ではない。僕がこの一家に関わったプロセスを見て欲しいのです。日本の分は僕の視点で見ていますが、トルコ編から映像の中に自分が映ります。それが嫌だったけれど、映ると別人になり切れると解った。演じるようなもので、それもある種の嘘ですよね。このお父さんは嘘をつきながらも世間と関わっている。色々な嘘のつき方等を見て、こうやって生きても良いんだ、こんな方法でも人と関われるんだと言うのに気が付いた。自分の問題に置き換えると気が楽になりました。

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(c)BACKDROPFILM

―狭い国土のこと難民問題は難しいですね。
野本:このレベルを受け入れるときりが無いですよね。国内でも高齢者の就職難や若者のフリーター等仕事が無い人が一杯いるのに、日本にはたしてそこまで余裕があるかという問題になります。本当の難民の姿が見えにくくなりましたが、そこにはっきりとした指針と展望が無いといけないと思います。
―この一家はニュージーランドで土地を手に入れるんでしょう?
野本:何だかんだ言いながら自分が動いて、デモをして、それをやり遂げたんだから大したもんです。出会った時から3年以上カメラを回し、同時進行で3,4ヶ月かけて編集しました。この映画の答えは言ってしまえばチープですが、そこに至るプロセスを見て欲しい。一番嬉しかったのが、車の中でお父さんが「僕の事を知ろうとしてくれているからね」と言ってくれた事です。僕は根本的には変われなかったけれど、こんな風に人と関わっても良いんだと教えられましたね。とにかくこの胡散臭いお父さんが魅力的だった。お父さんは僕にとってクルド人じゃあない、世界人です。こんな人に出会えてラッキーでした。

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(c)BACKDROPFILM

―変わった題名ですが。
野本:タイトルは自分のやりたかった事、やってきた事、この家族のやってきた事とかを一言で言いたかったんです。今の現象をひっくり返すと言う意味ですが、格闘技も好きですから。
―山形国際ドキュメンタリー映画祭や、毎日映画コンクールで受賞されましたが。
野本:山形で取れたのは嬉しいが、自分がやったことを自分で評価できないから、(こんなんでいいの?)という思いがある。撮ったと言うより、やったという感覚で、自分が変われなかった部分の反省が大きいです。制作の友人には「ラスト突き抜けていないね」と言われました。映画に出来ることには限界があるし、自分の力量のぎりぎりのところまで行ったけれど、自分の本質に向き合っていないので、満足できません。これで終わってはまずい。僕はこんなもんじゃあないよというのを次回作では見せたい。1作で終わる監督が多いけれど、入選しなくても良いから作らないといけないと思っています。次回作はこの作品を評価してくれた人を裏切るものにしたい。突き抜けた作品でもう一度賞を捕りたいと思います。(犬塚芳美)

<インタビュー後記とドキュメンタリーの感想:犬塚> 
 <台風の影響で新幹線が立ち往生していた日に>、野本監督は朝早く出発して「青春18切符」でもうすでに大阪入りしていたんだとか。1泊後のキャンペーンの後は4000円と言う格安の夜行バスのチケットをネットで見つけて帰ると嬉しそうに言う、いかにも若い男の子の元気さを持つ監督です。「こんな程度で貰ってはおかしい」と処女作の受賞をしきりに謙遜し不思議がるので、思わず「そんなところも含めての受賞なのでは。完成度ではなく今後の伸びしろ、受賞で更に発奮されるだろうところを評価されていると思います」」とお姉さん風を吹かせてしまいました。一生懸命質問に答えて下さる姿からも、今後の活躍が楽しみな監督です。
 <さて、このドキュメンタリーは>なかなか複雑。全容は観ていただくのがいいでしょう。お父さんの座り込みもそういえば確かにそんなニュースがあったと当時を思い出します。でもテレビのこちら側では、胡散臭さまでは解らなかった。強制送還する日本の外務省の非情さを怒ったものですが、これを観ると感想が違ってくる。「外務省ってよく調べるんですねえ」と言うと、「お父さんが日本にいる留守中に、(トルコの実家に)何度か日本人が来たと言うので、多分それが外務省の人でしょう」との事。そんな全てが面白くてたまらない様子の監督でした。

   この作品は、9月27日(土)より第七藝術劇場で上映
        10月4日(土)より神戸アートビレッジセンターで上映予定
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映写室「バックドロップ クルディスタン」監督インタビュー(後編):犬塚芳美

     ―野本大監督に伺う「クルド難民って?」― (昨日の続き) ― 一般的なクルド人はどうなのでしょう。 野本:嘘吐きだと言う人も多いで...
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journalist-net | 2008年10月01日(Wed) 19:43


 
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