太秦からの映画便り

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映写室 「コドモのコドモ」萩生田宏治監督インタビュー(後編)

映写室 「コドモのコドモ」
       萩生田宏治監督インタビュー(後編)

      ―子供たちの計り知れない力―

〈昨日の続き>
―麻生さんの演じる先生との関係はどうだったのでしょう。
萩生田:秋田でロケをしていたので、子供たちは旅館で合宿、大人はホテルです。仲良くするなとは一言も言わなかったけれど、麻生さんと子供たちは前半は話をしていなかったですね。別に仲が悪くもありませんがよくも無かった。でもだんだん慣れてきて、映画のとおり終盤には仲良くなっていました。これは大体が順撮りで進めていますから、この状況はそうでないより良いですよね。

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© 2008『コドモのコドモ』製作委員会

―子供もですが、大人の描き方が良いなと思いました。
萩生田:お母さん役の宮崎美子さんや麻生さんは、お腹が大きくなるのにどうして気付かないのかとかこんな子供がいたらどうしたら良いかとか、普段生活していても答えが出ないようなことを、悩みながら演技をしていました。演技として、悩み続ける事に悩んでいたというか、もっともそれが春菜のお母さんの本来の姿かなと思います。撮影中に教頭先生役の塩見さんが凄い子供好きだというのが解かって、だったらと長年子供を見つめてきた人の本音の言葉を盛り込むように変えたりしています。
―原作は12年後まで描いていますね。
萩生田:出産してヒロユキが町を出て行き、12年後に皆が農作業小屋に集るんです。で、八木先生が新しい赤ちゃんを産むんですが、この映画ではそこを1年後にしました。作っているほうの願いとして、1年後にこんな風になっていればいいなという思いを込めて作りました。お祖母ちゃんの死とかは、生を描くならどこかで死も描きたかったんです。でもそうするとお母さんが赤ん坊を一人で育てる事になる。大変だろうと、パーティのシーンでは地元秋田の名物を全て出して、僕らもお母さんをねぎらい慰めるつもりで作りました。

―あまり男性が出てきませんが。
萩生田:そうなんです。女たちで物語は進んでいきます。最初はもっと男のシーンも撮っていたんですが、男が意見を言ってる場合じゃあないだろうと編集の段階で気付いて、どんどんセリフを削っていきました。こんな時は男は頼りないものですよね。

―どういう世代に観て欲しいですか。
萩生田:特に限定はしていませんが、しいて言うなら、30代から40代の子育て中の人たちかなあ。ボクは中2と小4の娘がいるんですが、子供を育てながら育てられています。側で見ていると心配で色々やってあげたいけれど、少し突き放したほうが子供は上手くいけるし、こっちも楽になる。子供と接していて子育てでいっぱいいっぱいの世代に、子供にはこんな力があるよねというのを、これを観て思い出して欲しいです。
―完成した作品を子供たちは観ましたか。感想は如何だったのでしょう。
萩生田:春菜はまあまあよく出来ていると、ヒロユキはあのカットはちょっとまずかったとか、又よろしくお願いしますとか役者として見ていますね。今回は企画として受け取ったのですが、出産シーンとかあるので、僕としては出た子供たちが今後どう受け止められるかに一番配慮してきました。でも現場では、この映画に現れているように、子供の持っている力は凄いなあと思い知らされましたね。こちらが心配していた所をやすやすと飛び越えていく。自分の駄目な所を解かっていて、どうすれば直るかを言わないのに、自分で工夫して克服していきます。特に撮影も後半の冬になると、こっちが何か言わなくても自分でどうにかしようと追い込んでいけるようになりました。

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© 2008『コドモのコドモ』製作委員会

―子供たちのセリフが生き生きとしていますが。
萩生田:春菜のセリフは原作そのままを使いました。原作者のさそうさんがこれを書いた頃、長女が小5で、その年頃は汚い言葉を覚え始める頃なんですが、なるべく放置して観察し、彼女の言葉をセリフとして拾っていったらしいです。教育現場についてもさそうさんに子供がいたので、PTAでの経験とかを生かしたと。原作が観察に基づいているんで、僕も出来るだけ学校行事に参加して、言うことをきかない時女の先生はこう言うとかこうするとか、細かいシチュエーションを観察し、見聞きした事を参考にしました。
―学校や舞台になる町が田舎なのが、この物語的に良いなと思いましたが。
萩生田:情報の届き具合を言ってらっしゃるのだと思いますが、「JUNO ジュノ」は情報がある中で判断していますが、これは情報が届いているかどうかを抽象的にしたかった。どこでもないどこかと言うか。人間よりも木のほうが威張っているような場所で、撮りたかったんです。学校が決まった時に、命の大切さを描くにはぴったりの場所だと思いました。


―撮影はいかがでしたか。
萩生田:この作品は前半と後半で演出を分けていて、後半はドラマティックですが、前半はドキュメンタリータッチで、子供たちの時間がリアルに流れていきます。子供相手の撮影は大変と言えば大変でした。慣れるまでは一度教えたことが次の日に繋がらなくて、又最初から言わないといけない。毎日1から始める事になるんです。僕は彼らにとって友達でないことだけは確かで、教壇のこちら側から物を言い、「これは仕事だからね」と言い続けて、仕事は仕事として付き合ってきたので先生のようだとも言われました。でも子供というのはコントロールしきれない、計り知れないものを持っていると考えて付き合ったほうが良いですよね。そんな子供たちの豊かさを観て欲しい作品です。(犬塚芳美)
 
  この作品は東京で上映中
  関西では、10月25日(土)よりテアトル梅田、京都みなみ会館、
               シネカノン神戸で上映


《作品の感想とインタビュー後記:犬塚》 
 <この作品にはリアルな子供たちの世界>が描かれ、それを覗く色々な視点が見る人の立場によって選択できます。小学生の出産を扱ってはいるけれど、私はそれ以上に春菜の学校生活、子供たちと大人との関係に興味がありました。些細なことで昨日までは仲良しだった友達から仲間はずれにされる悲しさやその克服、その寂しさを母親には告げないところや、母親が忙しくてついつい子供の心を見逃してしまう瞬間、姉との関係、母親に言えない事を祖母に打ち明ける関係、先生の幼さゆえの一人よがりや無神経さ、逆にその先生が面目丸つぶれで挫けそうな心ややりきれなさ等々、誰もがかっての私なので、描かれている以上に後ろ側のそれぞれの感情をリアルに感じることが出来る。映画ファンだけでなく、子供に接する方にはぜひ御覧いただきたいと思います。
 <監督は、のんびりした私からはそんなに心配しなくても>と思うほど、出演した子供たちへの反響を気にしてらっしゃいました。韓国でネット上の中傷により人気女優を自殺に追い込むという事態も起こりましたが、今ネット社会で匿名の批判があっという間に広がる。そんな嵐に無防備に子供たちを晒したくないと、そこは同じ年頃のお子さんを持つお父様の顔も覗きます。「神童」に続いて子供が主役の作品ですが、難しい子供の演出の確かさとそんな細やかな心配りを信頼されて、まだまだ子供の作品が集まってくるかもしれません。
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| | 2008年10月24日(Fri)12:51 [EDIT]


有難うございます

この作品もですが、ミニシアターにはじっくりと見たい良い作品がかかります。いつかお目にかかれましように!

犬塚 | URL | 2008年10月24日(Fri)20:51 [EDIT]


目白押し

これも興味津々。今週末からの公開はみたい作品が目白押しです。夏公開の作品すらまだみれてない物も多いのに。仕事帰りに見るのが体力的にきつくて。

akiko | URL | 2008年10月24日(Fri)22:14 [EDIT]


子供たちが生き生きと描かれて

み応えがありました。お話的にユートピアを描いているので、後半からを映像的にもユートピアだとはっきり解るような演出法もあったと思うのですが、ここでは其処のあたりはリアルに表現しています。でもそう描きながらも全体的にユートピア、其処のあたりは原作者も監督も身近に子供がいてしっかり観察できたからなのでしょう。子供たちの世界は、まぢかで見れば、じっさいにユートピアなのだろうと思います。子供目線と大人目線を使い分けられる監督なのだと、インタビューで思いました。

犬塚 | URL | 2008年10月25日(Sat)06:46 [EDIT]


秋田でも

先週の今頃はちょうど秋田に滞在していたのですが、地元の新聞(秋田魁新報)に小さく記事が出ていました。
主人公と同じ年代の子供に見せるのは抵抗があるとか、むしろそれ位の子供を持つ親に見てもらいたいとかいう内容だったと思います。
この映画を見るにはなんだか恐いような、相当な心の準備がいるような気がするのですが、実際はどうなのでしょうか。

ayako | URL | 2008年10月26日(Sun)18:31 [EDIT]


赤ちゃんがお腹の中にいる

と言うのを、子供たちは途中経過が無くそのまま命の誕生と受け止めているような、あっけらかんとした所があって(監督がインタビューに答えてくださったままで、どこまでわかっているのか見当が付かない)、大人が見るんだったら心の準備なんて何も要りませんよ。
逆に実は監督に「出産シーンがあるまで想像妊娠だと思っていて、あそこもお腹からヌイグルミが出てきて、ポシャッとお腹もへこんでと、それでも子供たちは納得するような展開かと思っていました」と言った位で、(監督はそんな話も面白そうですねと答えてくださった)全く生々しさはありません。まあそれは私に経験が無いからこの子供たちと同じなのかもしれませんが。
ただこのお話は、やっぱ秋田のような純朴で世俗から距離のあるところじゃあないと、いくらユートピアでも成り立たないと思います。
この少女の祖母と母親が、世間体よりも少女のことを考えられる良い人たちで、少年の母親を一般的な役柄にしていますが、其処が気持ちよかったのかもしれません。
新聞のこの年代の子供たちに見せても良いのだろうかと言う戸惑いは、解るようなきもします。個人差があるので、この無邪気さで届くかどうかは解らない。それよりは、コドモの世界をコドモの目線で描いているので、それが新鮮な大人が見て教えられる所が大きい作品だと思います。秋田の旅素敵ですね。暖かい所で生れたので北国は憧れです。

犬塚 | URL | 2008年10月26日(Sun)19:41 [EDIT]


 

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journalist-net | 2008年10月29日(Wed) 07:56


 
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